最初の昼休み







まだマシだから、大丈夫




























長い授業も終わって漸く昼休み。
この席にいると何をされるかわからないから急いで席を立って、廊下へと向かい―――

ガタンッ!



「ってぇ・・・っ!」

足を引っ掛けられ、オレはその場に思い切りこけた。
起き上がって跡部を睨むと別方向から膝の裏に蹴りが入った。
それでまた転ぶ。
今蹴ったのは侑士で、足を引っ掛けたのは間違いなく跡部だ。

「ククッ・・・・・・オレの長い足が引っかかって悪かったな」
「なんや、こんなとこにおったん?ちっこい奴やから気ぃつかんかったわ」

朝のときとは違い、さすがにクラスの全員が、それをおかしいと思ったんだろう。
ざわめきが大きくなる教室。

オレはその場を逃げるように教室を飛び出した。















「岳人、いる?」

何かがあったなんて知らずにオレは跡部達の教室を覗いた。
跡部と忍足が不愉快そうにオレを睨む。

「その名前、出さんといてほしいわ」
「ああ。名前聞くだけで耳が汚れる気がするな」

何かしたな。
オレはすぐにわかった。
側にいた平部員を捕まえて訊ねる。

「岳人は?」
「え・・・さ、さぁ・・・・・・あっちの方に走ってったけど・・・」

彼が指で示したのは階段。
屋上へと続くものだった。
そっちの方へ走り出そうとしたとき。

「さっき、メールで関わるなって言うたやろ、滝」
「オレの友人関係を他人に決められたくないって送り返したはずだけど」
「関わったらお前も同じ目にあわせてやると言ってもか?」
「オレがそんなことをされる理由がない」

これ以上話しても無駄だろう。
オレはなにか言いたそうな忍足を無視して屋上へと駆けて行った。















「向日先輩」
「っ!」

呼ばれて振り返った先には『昨日の』後輩の一人。
名前は、城井。

「なっ、なんだよ・・・」
「『あの薬』、飲んだんですか?」

昨日はあんな態度を取っていたくせに、今日はいやに下手に出ている。
オレは緊張気味に頷いた。
昨日、別の後輩から飲まされた薬―――それがなんなのか、こいつは知っていた。

「・・・・・・あの薬がなんなのか、教えてもらったらしいですね」

オレの様子から昨日の事の続きを知ったような城井はオレに近づくと耳元で低く囁いた。



「誰にも言うなって言わなくても、あなたは絶対あの事を言えない。そうでしょう?」
「・・・・・・」
「アイツのことだから、きっとあなたが飲んだ後に薬のこと話したんだ・・・・・・」
「城井っ!」

廊下だと誰に聞かれるか分からない。
オレは彼の名前を呼んでその先を言うのを止めさせた。
だけど城井は話を続けた。

「・・・オレが逃げた訳、わかったでしょう?」
「・・・・・・」
「犬山のやつが・・・さっき、オレに泣きついてきて・・・昨日のことを後悔していると、そう言いました。
 あなたに謝りたいけれど、守月が怖くて出来ない、とも。
 ・・・・・・・・・あなたにしたって、選択肢は黙ってるか、オレと犬山に相談するか
 それぐらいしかないでしょう・・・・・・」

どうします?と訊ねる城井にオレは迷わずに返事をした。

「・・・・・・跡部にも、侑士にも・・・誰にも、言うな・・・・・・」
「先輩・・・」
「・・・・・・本当のことがばれて、大会に出場できなくなるよりは、
 部内で何とかできる今のレベルの方が・・・マシ、だろ・・・・・・」



溢れそうになる涙を堪えて、オレは城井に背を向けて屋上へと走った。














本当は楽になりたいんだ






















コメント

麻薬飲まされた事がばれたら警察沙汰ですが強姦程度なら
内部処理ができる、なんて実際に思うのは中学生で卒業しましょう。

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