いつもと同じに見えるの?







また少しずつ、羽が落ちてるんだ
























不思議と怒りとか哀しみとかは湧かなかった。
ああ、そうか。
自分の辞書とか、侑士達が捨てたんだ。
それがわかっても、何でか何も感じなくなった。

ゴミ箱を覗き込む気もおきず、仕方なしに教科書やノートを鞄の中から出す。
ちょうど鐘がなり、担任が教室に入ってきた。
くたびれたカンジの40代後半の男。

全員が席につく。
侑士はオレの後ろに、跡部はオレの横に。
先週あった席替えをこれほど恨めしく思ったことなんてない。

侑士と喋ったり、跡部と手紙回したり。
昨日まではとっても楽しかった席が、今ではとても怖い。

「起立」

学級委員の号令で立つ。

「礼」

ガタ、と小さな音がした。
たいして気にもせず座ろうとすると椅子がなかった。

「うわっ!?」

当たり前だが、そんなことをされたら思い切りこけるに決まってる。
ガタンッ、と大きな音を立ててオレは派手にずっこけた。

どっと起こる笑い声。
その中には悪意なんてちっともなかったのに。

「おいおい、何してんだ?」
「トロくさい子ぉやのー」

この二人の言葉には明らかな悪意が含まれていた。
クラスの何人かもそれに気付いたらしい。
まだ続く笑い声の中、何人かが怪訝そうな顔をして言葉を交わしていた。

「何してんだー、向日!ウケ狙いでも先生はウケないぞー」
「・・・・・・スイマセン」
「な、なんだ?今日はやけに素直だな?」

顔を上げずに素直に謝るオレを見て、教師は少し慌てた。
だが、その教師はオレのしたことに対して自分がウケなかった所為でオレが
落ち込んだんだと思ったらしい。
跡部と侑士の笑い方が変だということには全然気付いていない。

だけど教師なんてそんなもん。
絶対に生徒の様子がおかしいことには気付かない。
まぁ、これぐらいの些細な事でいちいち気がついて気を使ってたりしたら
心労重なって倒れるに決まってる。
今更ながら、金八先生って偉大だと思う。

とりあえずわずかにずらされた椅子を元の位置に直し、座る。
間髪入れず、後ろから乱暴に椅子が蹴られる。

「・・・痛い」

小さく言ってみるが、まるで聞こえなかったかのように跡部は侑士と目配せ。
そして笑う。



こいつらって、こんなに陰湿な事するっけ?
滝の言葉が思い出された。

『いじめって言うのは、本当に最悪だよ。
 女は陰湿とか、男は暴力とか、そんなの関係ない。
 相手を傷つけるためには手段なんて構わない事だってあるんだから』

その言葉、身をもって知ることになるとは思わなかった。








































少し、他の天使が怖くなった





















コメント

そうなんだよ岳人。金八先生は偉大だよ。
でも椅子は痛い。床に転がると痛い。
小学校の頃はそれで泣かされた子もいました。

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