ガンダムSEED DESTINY アナザーストーリー

RUN IN A WORLD〜世界を駆ける者〜







「どうして動いたんだろう……」
「ユニウスセブンですか?」

ルーラリアは廊下を歩きながら頷いた。

「あんなに大きなものが落ちるなんて考えられない。人為的に、というのは分かるんだけど……誰が、何の目的でってのが問題」

隕石が当たったと考えられなくもない。
だがユニウスセブンの軌道を変えるぐらいの質量を持つ隕石ならば、その存在を事前に知ることぐらいできるはずだ。

「地球に落ちる、ということはプラントの誰かの仕業でしょうか?」

ニコルの言葉をルーラリアは否定しなかった。
ただこんなことをした奴は地球に落ちるという結果を知ってやっているのだろう。
そう考えればニコルの言葉に対する答えは否定ではなく、むしろ肯定になる。

「心当たりは、実はなくもないんだよね」

犯人の、とルーラリアは呟いた。
ニコルが驚いたような顔をし、ルーラリアは困ったように笑った。

「アスランには、内緒ね?」
「え?」
「また落ち込むかもだから」

そう言うと彼女は、周りに人がいないかを確かめた。
誰もいないのを確認すると、ルーラリアはニコルにしか聞こえないような小さな声で言った。

「目的がユニウスセブンを地球に落とすことなら、たぶん、旧急進派。パト兄とエザ姉の信者。そう思う理由はさっきヨウラン君?が言ってくれた。『変なごたごたもきれいになくなって、案外楽かも。オレ達プラントにとっては』ってね」
「それは…」
「あの場にはそぐわない『冗談』。ただし、それを本気で考えられたら、この方法はベストかもしれない」
「…プラント市民が皆そう思っているわけではありません」

ニコルはルーラリアの言葉を否定するように首を振った。
ルーラリアもそれは分かっている。
分かっているからこそ腹立たしいのだ。
ユニウスセブンが落とされて人々がどう思うかなど分かりはしない。
だが、落とされた人々がその冗談を真に受ける可能性は相当高い。
というか、もう少しTPOを考えてほしい。

「……ボクも、言い過ぎたよ。プラントにはエザリア達がいるし、シーゲルやパトリックだって眠ってる。そこにレノアの墓標を突っ込ませるなんてこと、したくない。させたくない」

ルーラリアはきっぱりと言った。

「…ルーラがそう思ってる事は、分かってますよ。ところで…」
「ん?」
「とっくに部屋を通り過ぎてるけど、どこに行くつもりですか?」

「心当たりは〜」の辺りから、二人は与えられた部屋の前を通り過ぎていた。
ルーラリアとニコルは顔を見合わせて乾いた声で笑った。

「分かってるくせに」
「……やっぱりブリッジですか?議長がいらっしゃいますよ?」

この先でルーラリア達が知っている場所はブリッジしかない。
ニコルは薄々、ルーラリアのやりそうなことを読んでいた。

「何をしに行くんですか?」
「機体を借りに」

即答するルーラリアにニコルは頷いた。

「そうだろうなって思いました。でも、その傷で?」

まだ歩行の為に杖を必要とするような怪我人に、モビルスーツの操縦なんてできないのではないか、とニコルは心配そうに言った。

「でも、やらなきゃ。地球の危機の前には、一人の怪我なんて些細なことだよ」

そう言うルーラリアの声は明るい。

「たとえ今無茶して二度と足が動かなくなったとしても、地球が助かるなら後悔はない……って訳でもないけど、やっぱり少しは後悔はするかな」
「ルーラ」
「やらせてほしいの」

引き止められる前にとルーラリアは真剣にニコルを見た。

「ボクは地球にユニウスセブンを落下させたくないの。理解して欲しい」
「わかります」

ニコルの言葉にルーラリアは嬉しそうな顔をする。

「でも、ルーラリアを行かせる訳にはいきません」
「ニコル!」
「怪我をしている恋人を行かせて、無事な僕がここで待つなんて、僕が嫌です」
「え?」

ニコルの笑顔にルーラリアはきょとんとした。

「つまり……僕がルーラの代わりに機体を借りてユニウスセブンを砕きます」
「……………はああぁぁっ!?」

ルーラリアの声は廊下の遥か後ろの方にいたヨウランとヴィーノにも聞こえていた。
二人は何事かとニコルとルーラリアを見たが、その姿はかなり小さかったため、何を話しているかなど聞こえなかった。

「何言ってるの!?そんなのダメ!絶対!」

ルーラリアは凄い剣幕でニコルに食ってかかった。

「どうしていけないんですか?」
「だって、心配だもの!」
「だから行くんですよ」

ニコルは宥めるようにルーラリアの頭を撫でた。

「ルーラが僕を心配してくれるように、僕だってルーラが出て行くのは心配なんです」
「……」
「怪我をしているからだけじゃなく、ルーラリアに万一のことがあったら僕はどうしたらいいんですか?はっきり言えば、あなたを機体に乗せたくないんです」

黙り込むルーラリアに、ニコルはさらに言葉を続けた。

「あなたのモビルスーツの腕前は知っています。だけどルーラは人の指示をまるで聞かずに突っ走る傾向があるから……」
「こういう作業には不向き、自覚はあるよ」

不貞腐れたようにルーラリアは言った。
ニコルは彼女の肩を抱き、強い口調でそれを嗜める。

「それなら尚更です。ルーラはここに残って待っていてください。ユニウスセブンは僕がちゃんと……」
「あれはニコルの同胞の墓標でしょうっ!?」

ルーラリアはニコルの手をはねのけた。

「砕けるの!?本当に!?辛くないの!?苦しくないの!?」
「ルーラ……」
「まだあそこに眠っている人だって大勢いるんだよ!?ニコルにできるの!?」

コーディネーターが眠る地をコーディネーターが壊すなんて。
死者の眠りを妨げるなんて。
ルーラリアはニコルにそんなことをさせたくなかった。
ニコルにそんなことをさせるぐらいなら自分が砕く。
同胞を救うと言う自己満足の大義名分を抱えて。

「やらせたくないんだよ!ボクが嫌なの!」
「砕きます」

ニコルは涙を流すルーラリアを強く抱き締めた。

「ニコル…?」
「一人で抱え込むのはやめてください。ルーラの方がよっぽど苦しいでしょう?
辛いことは、二人で分けあえばいいんです」
「でも……」

なおも何か言いたそうなルーラリアの唇を、ニコルは自分の唇で塞いだ。
突然のことに驚いたルーラリアだったが、すぐに目を閉じる。

「…ン…」
「大丈夫ですから」

ね、とウインクすると、ルーラリアも渋々頷いた。











                                 BACKNEXT

あとがき


あれ、ギャグがない。