ガンダムSEED DESTINY アナザーストーリー
RUN IN A WORLD〜世界を駆ける者〜
「ショック?アスハのお姫様がショックなんか受けるんですか?」 シンはルーラリアの言葉を鼻で笑った。 彼にとってはルーラリアの言葉もカガリの言葉も詭弁にしか聞こえない。 大戦の英雄? 国を焼いたお姫様が英雄扱いされていい気になって! ルーラリアにしたって地球軍に所属していたと聞いたことがある。 そんな奴が名前を変えてのうのうと生きて! 二人とも、オーブを焼いた原因だ。 なんで国を犠牲にした奴等が平和なんて叫ぶ? 「殺したくせに……」 「殺した?」 ルーラリアが堪えきれずにこぼした涙を拭き、尋ねた。 「誰が誰を殺したの?カガリやボクに関係あるの?」 「大ありだよ!」 シンはルーラリアとカガリを睨み付けた。 「オレの家族はアスハに殺されたんだ!国を信じて、アンタ達の理想とかってのを信じて、そして最後の最後にオノゴロで殺された!」 シンの言葉にルーラリアはようやく彼のことを理解した。 彼はあのオーブ解放作戦の犠牲者だ。 「カガリに突っ掛かったのは、そういうことか……」 確かにシンの気持ちは分からないでもない。 家族を殺されて怒らぬ者はいないだろう。 「だけど、あの時オーブを焼いたのはアスハじゃない。地球軍だ」 「他人事みたいに言うな!お前だって地球軍の癖に!お前が焼いたも同然だろ!」 ルーラリアの目が光った。 彼女はシンの首に手を掛け、締め上げる。 「もういっぺん言ってみな、ガキが!誰が地球軍だって?誰がオーブを焼いたって?えぇ?」 「ルーラ!」 アスランがルーラリアを後ろからはがいじめにし、ニコルが彼女の手をシンから引き離す。 シンは咳き込みながらもルーラリアの言葉に反論した。 「何度だって言ってやるさ!国を焼いたアスハや地球軍が英雄気取りで偉そうなこと言うなってな!」 シンは怒りに燃えて吐き捨てた。 「そんな奴等が言う平和をオレは信じない!オーブなんて国も信じない!国の正義を貫くって……アンタ達だってあの時、自分達のその言葉で誰が死ぬ事になるのか、ちゃんと考えたのかよ!?」 「はぁ!?じゃあ地球軍にシッポ振って国内のコーディネーター全員見捨てろって言いたいわけ!?そうだよね、そうすりゃ戦闘は起きなかった!」 「犠牲はでる!お前、何も分かってない!そんな奴が分かったような事言わないで欲しいね!」 「何も言われてないのに何をどう分かれってのよ!」 「ルーラ……ッ」 カガリが激昂しているルーラリアを呼んだ。 場の空気の緊張をこれ以上高めない配慮が伺え、ルーラリアは怒鳴るのをやめた。 「……ごめん。君だって辛いのに、それを責めた。最低だ、ボクは」 シンは謝罪の言葉を述べたルーラリアを怒りに燃えた瞳で睨み付け、カガリにわざと肩をぶつけて足取りも荒くレクルームから出て行った。 ヴィーノがその後を追いかけ、静寂が訪れたレクルームでルーラリアは再びベンチに腰を下ろした。 「……あの時、ウズミは……コーディネーターもナチュラルも見捨てるなんて考えなかったんだよ……」 ぽつりとルーラリアは呟いた。 「ヒトを切り捨てないその考えは、悪いことじゃあないのにね……」 シンの言う事はもっともだ。 国民を犠牲にしてまで理念を貫くことに意味はない。 だがあれは、コーディネーターを犠牲にするかしないか、そしてまた、ナチュラルを犠牲にするかしないかの選択でもあったのだ。 地球軍と手を組めばコーディネーターは迫害され、プラントに応援を頼めば後にナチュラルが犠牲になる可能性は高い。 どちらも犠牲にしたくないとウズミ・ナラ・アスハは考え、それを地球軍は受け入れなかった。 その理念が通じない者もいる事を、ルーラリア達は改めて知ったのだった。 「こうして改めて見ると、デカいな」 「当たり前だ。オレ達は住んでいるんだぞ。同じような場所に」 「それを砕けって今回の仕事がどれだけ大事か、改めて分かったって話だよ」 ナスカ級艦ボルテールでディアッカとイザークはユニウスセブンを見つめていた。 隊長と副長であるはずの二人はそんな上下関係など全く気にかけてはいないようだが。 彼らもまた、ユニウスセブン落下の知らせを受け、その破砕作業に参加する事になっていた。 「だが、砕かねばならん」 イザークはユニウスセブンを見つめたまま言った。 「地球に落ちれば被害は……考えたくもない」 「あいつら、いるしなぁ」 ディアッカは先の大戦で知り合った顔を思い浮かべる。 キラ、アスラン、ラクス、カガリ、マリュー、ニコル、ルーラリア、それにミリアリア。 アークエンジェルやクサナギに乗っていて知り合った者のほとんどは地球にいる。 彼らが住む地球にユニウスセブンを落とす訳にはいかない。 「別にアスランの心配なんぞしてはいない!」 「……オレ、アスラン指名した覚えないけど」 「うるさい!」 イザークはディアッカに噛み付くように怒鳴る。 まさか話題の人物達が議長と共にミネルバに乗っていようとは、二人とも思ってもいなかった。 ディアッカは笑ってエレベーターに向かった。 同僚に向けてイザークは指示を出した。 「いいか?たっぷり時間がある訳じゃない。ミネルバも来る。手際よく動けよ!」 「了解!」 ディアッカはいい加減に敬礼を返した。 BACK/NEXT あとがき ジュール隊改めグゥレイトゥ隊登場。 彼らを含め、旧作キャラは皆さん、ゴキブリのようにしぶとく生きてくれます。 |