ガンダムSEED DESTINY アナザーストーリー

RUN IN A WORLD〜世界を駆ける者〜







カガリとアスランのところにギルバートがやってきた。
話がある、と深刻な顔をして。
どうしてもその場に居合わせたくなかったルーラリアは「ちょっとリハビリもかねて艦内を歩いてまいります」などと最高級の笑顔を取り繕い、言った。
ニコルをその場に残し、一人で艦内を歩いていた彼女はとんでもない言葉を耳にすることになる。



「ユニウスセブンが動いてる?」

ふとルーラリアは足を止めた。
声の出所はレクルームだ。
一瞬、彼女は耳を疑った。

(質の悪い冗談言わないでよ……あれが落ちるわけないっしょ……)

そもそもユニウスセブンは100年は安定軌道上にあるとされるのだ。
そんなものが今動く訳がない。
だが、レクルームから聞こえて来る声はそんなルーラリアの予測を裏切っていた。

「けど、なんでアレが?」
「隕石でも当たったか、何かの影響で軌道がずれたか……」
「地球への衝突コースだって……ホントなのか?」

シンの声がした。
さすがにここまで言われては嘘だろうとも言えない。
ルーラリアは聞き耳を立てようかとも思ったが、やはりそんなことをするよりは正面きって彼らと会話をしたいと言う思いがある。
彼女は歩行杖をつきながらレクルームの扉をくぐった。
クルー達の好奇の視線を受け、ほんの少しの居心地の悪さを感じたものの、構わずルーラリアは中へ入った。

「ここ、よろしくて?」
「あ、はい。どうぞ」

ヴィーノがルーラリアに席を譲った。
メイリンが手を貸し、ルーラリアはベンチに座った。

「……ユニウスセブンが動いてる……本当なのですか?」

ルーラリアの言葉に彼らは互いに顔を見合わせた。
シンがぶっきらぼうに「そうだよ」と言った。

「アーモリーでは強奪騒ぎだし、それもまだ片付いてないのに今度はこれ!?どうなっちゃってんの?」

ルナマリアの溜め息にルーラリアも頷いた。

「地球への衝突コース……か……なんか、作為的なものがありそうだなぁ……」
「で、今度はそのユニウスセブンをどうすればいいの?」

ルナマリアの問いにレイとルーラリアが同時に答えた。

「砕くしかない」
「砕くっきゃないね」

当たり前だと言わんばかりのルーラリアの調子に当惑を見せたのはレイ以外の全員だった。

「アレだけ大きけりゃ、軌道変更なんてどう頑張ったって無理。引力もあるしね」
「衝突を回避したいのなら砕くしかない」
「砕くにしても、まぁ……デカすぎて難儀するけど……やらなきゃどうなるか、なんて言わなくても分かるっしょ?赤子じゃないんだから」

ルーラリアの言葉に一同が重い空気に包まれる。

「地球、滅亡……?」
「……だな」

重い空気に耐えられなくなったのか、ヨウランは殊更明るい調子で喋り始めた。

「でも、しょうがないっちゃしょうがないんじゃないの?不可抗力だろ?」
「あ?」

不可抗力でユニウスセブンを落とされてたまるか。
そんなルーラリアの非難するような視線にヨウランは気付かない。

「けど、変なゴタゴタもきれいになくなって、案外楽かも。オレ達プラントにとっちゃ……」

ヨウランは本当に冗談のつもりだったのだろう。
しかし、そこにいた人物とタイミングが悪すぎた。
ルーラリアが口を開きかけた時、もっともそれを聞かれてはならない人物が現れたのだ。

「よくそんな事が言えるな、お前達はっ!」
「あら、アスハ代表。と……えー、アレックス?ニコラス?」

内心笑い出したいのを堪え、ルーラリアは軽く手を振った。
カガリはそんな彼女を睨み付け、さらに皆に詰め寄る。

「しょうがない、だと!?案外楽だと!?これがどんな事態か、地球がどうなるか、どれだけの人間が死ぬ事になるか、本当に分かって言ってるのか、お前達はっ!」
「……すいません」
(反省の色ナシ)

ルーラリアも内心ではカガリと同じ気持ちだった。
本人達にしてみれば冗談だろうが、地球に住む自分達にとってはヨウランの発言は完全な地雷だ。
しかも反省がみられない、とくれば、さらにカガリが怒るのもわかるわけで。

「やはりそういう考えなのか、お前達ザフトは!あれだけの戦争をして、あれだけの思いをして……やっとデュランダル議長の施政の元で変わったんじゃなかったのか!?」

ただ、とルーラリアは思う。
オーブとプラントのではなくナチュラルとコーディネーターの壁が見えるようだ。
彼らだって何も分からない訳ではないだろう。
しかし、所詮彼等にとってはどこか他人事なのかもしれない。

アスランがカガリの腕を引いた時、シンが怒ったような声で言った。

「別に本気で言ってた訳じゃないさ、ヨウランも。そのくらいの事も分かんないのかよ、アンタは!」

プチ、とルーラリアの中で何かがキレた。
冗談なら何を言おうと構わないのか?

「シン、言葉に気をつけろ」
「あー、そうでしたね。この人、偉いんでした。オーブの代表でしたもんね」

レイの咎める声も聞かない彼にカガリが口を開くのとアスランがカガリを諌めるのとルーラリアが吐き捨てるのは同時だった。

「お前っ……!」
「いい加減にしろ、カガリ!」
「はん!どうせならユニウスセブン、プラントにつっこみゃ良かったのよ!」

さすがにこれにはカガリもシンも言葉を失った。
ある程度ルーラリアがキレる事を予想していたニコルとアスランもその言葉の内容に茫然としている。

「何固まってんの?ゴタゴタがなくなって欲しいんでしょ?だったらプラントがなくなったって同じじゃん?なんか間違ってる?」

ルーラリアは挑発するようにシンを見た。

「ボクは偉い人じゃないから罵るのに言葉選ぶ必要ないよ、シン君?」

挑発のような、ではない。
完全な挑発だ。
激昂したシンがルーラリアに手を上げようとした時。

「別に本気で言ってた訳じゃないよ、ボクは。そのくらいの事も分からないの、君は?」

シンの怒りの瞳を正面から睨み返し、ルーラリアは言った。

「ユニウスセブンの本当の軌道は地球だよ。わかってんの?君達はボクに言われた事でそうやってショック受けたり怒ったりしたけど、実際に地球の人達ボクやカガリが今それを聞いたらどんな思いするのか分かんないなんて言わせないよ!あそこには、ボクの大切な人達がたくさんいる……ボクの大好きな国だってあるんだ!絶対に、冗談でも『案外楽かも』なんて言わないで!」













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あとがき

あれ、なんでジュール隊(グゥレイトゥ隊)が出てこないのかな?
次回に持ち越し。