ガンダムSEED DESTINY アナザーストーリー

RUN IN A WORLD〜世界を駆ける者〜







「……ヴィア……?」
「ルーラ?」
「……No……no……I don't know……」

何かを怖がるかのように首を振り、ルーラリアは目を開けた。
途端に彼女は怪我の痛みに顔をしかめた。

「痛い……」
「大丈夫ですか、お嬢さん?」
「!」

ルーラリアは警戒するような気配を出した。
だがそれは一瞬で、すぐに彼女は笑みを作った。

「ご心配、ありがとうございます。耐えられぬ痛みというわけではありませんし、大丈夫です」

ルーラリアはニコルの背から慎重に降り、次にタリアに向き直った。

「先ほどは申し訳ありませんでした。一民間人が、出過ぎた発言をしたと……」
「私も……あの場で発言する権利などなかったのに、申し訳ありません……」

ルーラリアとアスランは揃って頭を下げた。
ニコルも頭を下げ、タリアはそんな3人を見て微笑んだ。

「あなた方の判断は正しかったわ。そのおかげで私たちは助かったのよ。ありがとう」

礼を言われてアスランとニコルは戸惑ったように少し目を合わせた。

「艦長さん」

敬礼し、去ろうとするタリアをルーラリアが引き止めた。

「副長さんに、伝言を頼みたいのですが……よろしいでしょうか?」

タリアはルーラリアを見て少し驚いた様子だった。
アーサーに、一体何の話だろう?

「『先程は不快な気分にさせて本当にごめんなさい。もう少し言葉を選ぶべきでした』と……」

タリアは理解した。
彼女はただ純粋にアーサーに謝りたいだけなのだ。
きつい言葉を彼にぶつけたことをすまなかったと思っているだけだ。
この少女の思いを裏切るほど、タリアは無粋な女ではなかった。

「伝えるわ」

ルーラリアの顔がわずかに明るくなった。
彼女は再びタリアに頭を下げた。



ルーラリアはアスランとニコルを連れ、レクルームに来た。
ジュースを飲みたい、と無理やりに二人を引っ張って来たのだが、そんなものはただの口実だった。
ベンチに腰を下ろし、ルーラリアは溜め息をついた。

「……最初から気付かれてた……とはいえ、あの場で言われるとは思わなんだ……」

誰に何を、と聞かずともニコルとアスランには分かっていた。

「『ルーラリア』はともかく、ザフトの中で『アズラエル』はマズいよ」
「僕達の正体よりもある意味まずいですよね」

ニコルが同意した。
オーブに亡命したことの方が世間的にはまずかろうが、コーディネーターの前でブルーコスモスの背後につくものの名前を出される方がよっぽどまずい。
しかもアズラエルは前大戦を拡大させ、被害を拡大させたブルーコスモスの盟主だ。

「……それにしたって、アズラエルの名前を知ってるのはそんなにいないと思うんだけどなぁ……」

ルーラリアは思い出すように名前をあげた。

「元評議会はばらす訳ないから除外、ウズミ、ムルタ、ラウも除外、メンデル関係者も……除外、かな?カナーバ臨時議長やイザーク、ディアッカも除外だし、アスランがばらしたとしたら今頃……ねぇ?」

ルーラリアは脅すようにアスランに笑いかけるがアスランからの反応はない。

「アスラン……悩むとハゲるよ?」

ルーラリアの真顔での発言にニコルは吹き出した。
が、次の瞬間に廊下に聞こえた声に二人は黙った。

「何言ってんのよ、あんたは。いくら昔……」

声の主はルーラリア達に気付くと口を噤んだ。
ルナマリア、レイ、シン、それにブリッジにいたメイリンといったか、4人がレクルームに入って来た。

「へぇ……ちょうどあなた達の話をしていたところでした。アスラン・ザラ、ニコル・アマルフィ、それに、ユーラシス・アズラエル」
「………」

ルーラリアの瞳が細められた。
今の彼女の心の中は「黙れ、殴られたいか?」だろう。
本名で呼ばれることを彼女はとても嫌うのだ。
ニコルはルーラリアが立ち上がらないように肩に手を置き彼女を諌めている。

「伝説のエース方にこんなところでお会いできるなんて光栄です」
『はっ、それはどうも』

日本語で呟くルーラリア。
シン達には聞こえないほど小さな声だったが、近くにいたニコルとアスランにはバッチリ聞こえていた。

「そんなものじゃない。オレはアレックス、彼はニコラス、彼女はユーラシス・エルミッシュだよ」
「だからもうモビルスーツには乗らない?」
「乗らないと言うよりは、乗る気にならない、と言った方が正しいですね」

挑発するようなルナマリアにニコルは即答した。
もう殺すのも殺されるのも嫌だ。
先の大戦では皆が傷ついたが今はそんな世界ではない。
モビルスーツに乗る気など起きる訳がない。

「よせよ、ルナ。オーブになんかいる奴らに……何も分かってないんだから!」

シンはそんなニコル達に怒鳴ると足早にその場から立ち去った。
レイがその後を追いかけ、メイリンも逃げるように続いたが、ルナマリアはそこから動かなかった。
なおも挑発するように、今度はルーラリアを見てくる。

「アズラエル、っていえば、ブルーコスモスの元盟主のお名前ですよね。まさか、お子さんとか?」
(異母姉さんですなんて言えないなぁ……)

ニコルは心の中で苦笑した。
言ったとしてもとても信じてはもらえないだろう。

「『少なくとも君よか年上だよ、ジャリガキ。』それは議長がお間違えになっただけですわ。わたくしは、ユーラシス・エルミッシュですもの」

ルーラリアの微笑みの下に何やら黒いものが渦巻いている。
ルナマリアもそれを感じ取ったのか、慌てて弁解するような声を出した。

「いっ、いえ!ただ、本当にアズラエルという名であれば、何故ザフトの艦にと思っただけで……」

ルーラリアのことを知らないとはいえ、フォローを入れようとして地雷原を爆走するようなルナマリアにそろそろアスランとニコルは同情を禁じえなくなってきた。

「それには答えられませんよ」
「そっ、そうですよね!失礼しました!」

ルナマリアはレクルームから逃げるようにして出て行った。

「……名前って、そんなに大切?」

ルーラリアは肩をすくめ、言った。

「部屋行こう。カガリが待ってる」















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あとがき

よし、漸くユニウスセブンを落とせるぞ!(コラコラ)
そしてついにイザークとディアッカが!