ガンダムSEED DESTINY アナザーストーリー

RUN IN A WORLD〜世界を駆ける者〜






現在生きていて使い物になると言えるものは主砲、それにタンホイザー。
火砲が幾つか。
状況は前方に巨岩、後ろにボギーワン、右に小惑星。
左には小さな岩に敵モビルスーツ。
このままではボギーワンに的にされる。
左に出ても逃げ切る前に撃たれる。
前の岩を壊せばまた同じ量の岩塊を撒き散らす。
後ろなんて攻撃できようもない。
右―――は、論外。

(待てよ……右……?)

ルーラリアの頭にふと一つの案が閃いた。
だが、それは余りにもリスクの高い選択。
加えて、右舷のスラスターが幾つ生きているかが問題になる。
ただ死にたくないと思う自分の意見がこの艦に乗っているザフト軍に果たして通じるのか?

「右舷のスラスターは幾つ生きているんです?」

突然のアスランの言葉にタリアやクルーが一斉に彼に目をやった。

「6基よ。でもそんなのでノコノコ出ていってもまたいい的にされるだけだわ」

「6基……」

アスランと自分の考えが同じなら、タリアはどんな反応を返すのだろう。
驚き、提案を受け入れるか、却下するか。
ルーラリアは後者だろうな、と予想をつけた。
ザフト軍全員がそうだと言う訳ではないが、ルーラリアの知っているザフト兵は皆一様にプライドが高いから。
もしかしたらイザークなんかは命よりもプライドを選ぶかもしれない。

「右舷の砲をスラスターと共に一斉に撃つのですか?小惑星にむけて……」

静かにルーラリアが口を挟むとニコルが納得した表情を浮かべた。

「爆圧を利用して船体を周りの岩ごと押し出すんですね?」
「バカを言うな!」

副長のアーサーが大声を上げた。
やっぱり、とルーラリアは内心で思う。
普通はリスクの方に目を向けるだろう。
軽い、リスクだ。
ルーラリアは溜め息をついた。
どうも人は思考の端から端まで見えている範疇のリスクしか追わないらしい。

「そんなことをしたら、ミネルバの船体だって……」
「そう、確かにおっしゃる通りです」

ルーラリアが言った。
もっと大きなリスクを、見せてやろう。

「既に傷ついているミネルバがこれ以上の衝撃に耐えられる保証はありません―――ボギーワンからの攻撃に、という意味ですが」

クルーがハッとした顔になる。
確かに爆圧を利用するリスクは大きい。
だが、ボギーワンからの攻撃に比べればそんなことは些細なリスクではないか?
少なくとも、確実に撃たれる訳ではない。
それでもまだ煮え切らない表情のアーサーを見て、ルーラリアは脅すような声を出した。

「オーブとプラント、双方の代表が乗っておられるこの艦を――よもや、助かるかもしれない道を選ばず、敵からの砲火に晒すおつもりでしょうか?」

ルーラリアはわずかに声を荒げた。

「脅迫ととっていただいて構いません。外交問題、世論を盾に脅しているつもりですから。代表方がお側にいられる限り、この艦は沈む訳にはいかないのでしょう?何を悩むことがあるのです?簡単な計算ではないですか―――100%の死、僅かな生の可能性―――部外者の言葉は聞きたくないと安いプライドをとるか、プライドをお捨てになられるか」
「だが……」
「我々はザフトではありません。部外者です。ですが、当事者なのです」

張り詰めた空気が流れた。
アーサーはルーラリアを睨み付け、ルーラリアもアーサーを睨む。

「……死にたく、ない。それは、誰も同じでしょう?」

そのための手段の中で、人は常に最良と思われる手段を選ばねばならない。
やがてはそれが火種とならぬように。

タリアが口を開いた。

「いいわ。やってみましょう」

アスランとニコルは驚いた。
まさか部外者の意見を聞くなんて、と。

「艦長!」
「この件は後で話しましょう、アーサー。右舷側の火砲をすべて発射準備。右舷スラスター全開と同時に一斉射!タイミング、合わせてよ」

納得できない表情のアーサーにもタリアは指示を出す。

「立場、悪くなりますよ?」

ニコルはこっそりとルーラリアに話しかけた。
ルーラリアは頷く。

「だけど、生か立場かなんて、そもそも比較対象にすらならない。アレックスも君も、ザフト内で目立つ訳にもいかないでしょ?だから言った」
「……」
「………どうして、言いたいことをソフトに伝えられないんだろうね、『ユーラシス』は……」

自嘲するようにルーラリアは呟いた。



「右舷スラスター全開!」
「右舷全砲塔、てぇーっ!」
タリアの命令とアーサーの声が重なる。
予想以上の衝撃にルーラリアは唇をきつく噛み締めた。
固定していた膝への激痛に悲鳴を必死に殺している。

「っ……う……」
「ルーラ」

ニコルは衝撃に耐えながら立上がり、片手をルーラリアの座っているシートに回し身体を支えた。
もう片方の手をルーラリアの肩に回し、彼女の顔を自分の胸に押しつけた。

「唇を噛むぐらいなら僕にでも噛み付いてください。痛いでしょう?」
「んっ……」

ルーラリアはニコルの肩に噛み付いた。

「回頭30!ボギーワンを撃つ!」
「タンホイザー照準!ボギーワン!」

この距離なら外さない。
タリアの気迫が伝わる。
タンホイザーの発射を見ながら、ルーラリアは瞳を閉じた。

「ルーラ……?」

ニコルにしがみついているルーラリアの手から急に力が抜けた。
気を失っている。
長らく戦場から遠のいた彼女は怪我の痛みと疲れから気を失ってしまったのだろう。

「大丈夫ですか?」

不意に声がかけられた。
ギルバートがこちらを見ている。
もしかして一部始終を見られていたのだろうか。
ニコルは軽く頬を染め、頷いた。

「ええ。ケガの痛みで気を失っているだけのようです」
「そうですか。すみません、怪我人だというのにブリッジに連れ込んでしまい……」
「いいえ、お気になさらないでください。こちらもお言葉に甘えてしまったので……」

丁寧な謝罪の言葉を口にするギルバートにニコルは首を振った。
だがギルバートの謝罪はどこかおかしい―――まるで誠意しかこもっていないような、計算され尽くされた謝罪だ。
自然な感情がないように感じられる。

「ともかく、これ以上あなた方を振り回す訳にもいきませんね。お部屋までご案内致しましょう」

ギルバートが立ち上がった。
カガリとアスランも立ち上がる。
ニコルはルーラリアの身体を抱き上げ、所謂『お姫様抱っこ』状態でその後に続いた。


















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あとがき

携帯で書いてみたらなんだかやけに長いようで短い。
一応これで5000字ぐらいじゃないのか?
次でユニウスセブンの話を・・・・・・出せないね、絶対。