ガンダムSEED DESTINY アナザーストーリー

RUN IN A WORLD〜世界を駆ける者〜







「インパルスは、工廠でご覧になったそうですが?」

ギルバートの言葉にアスランは頷いた。

「技術者に言わせると、これはまったく新しい、効率の良いモビルスーツシステムなんだそうです。私にはあまり、専門的なことはわかりませんがね。・・・・・・しかし、やはり姫とお嬢さんはお気に召しませんか?」

わずかにカガリが顔をしかめたのを見てギルバートが言った。

「議長は、嬉しそうだな」
「これを見てすごいとは思います。が、平和な今の世には必要のないものではないですか?」

当たり前だといわんばかりにカガリがそう言った。
ルーラリアも目の前に並ぶ機体を見たまま言った。

「嬉しい・・・と言うわけではありませんがね。しかし、平和というものを作るためにこの機体は開発されました。それにあの混乱の中から皆で懸命に頑張り、ようやくここまでの力を持つことが出来たということは、やはり―――」
「力・・・か」

カガリは呟いた。
確かに戦後の混乱の中からここまで技術を回復させたことは素晴らしいことだろう。
だが、再び力を手にしたことは、誉められない。

「争いがなくならぬから、力が必要だと仰ったな、議長は」
「ええ」

ギルバートの微笑がルーラリアの癇に障る。

「だが!では、このたびの事はどうお考えになる!?あのたった3機のモビルスーツのために、貴国がこうむったあの被害のことは!?」
「代表!」

ルーラリアが何かを言おうとする前にカガリが激しい口調でギルバートに問い掛ける。
アスランはカガリの気を落ち着かせようとするが、彼女はそれを聞こうとしない。
しかし、ギルバートは彼女の様子などまったく意に介さない。

「だから、力など持つべきではないのだと?」
「そもそも何故必要なのだ!そんなものが、今更!」

カガリの声がモビルスーツデッキにいる者達の注目を集め始める。
まずいな、とニコルは思った。
本来、ここにいるべき人間でないカガリや自分達が姿を見せているというだけでもまずいのに、さらにカガリがプラントのことにまで意見しているのが聞かれたら、些細なことだが、トラブルすらおきかねない。
そんな彼の予感は、的中することになる。

「我々は誓ったはずだ!もう悲劇は繰り返さない。互いに手をとって歩む道を選ぶと!」

そしてそれを願った。
もう二度と、悲劇など起こらぬようにと。
それなのに、これではまた繰り返し―――



「さすが、きれいごとはアスハのお家芸だな!」

聞こえよがしに投げつけられた声。
驚いてそちらを見やる全員に、一人の少年が振り向いた。
怒り―――そんな言葉がぴったりの瞳の色をした少年だ。
赤い軍服に身を包んだその少年を、ルーラリアは通信を通して知っていた。

「あ・・・・・・インパルスの人・・・・・・?」
「シン!」

怒ったように彼の名前を呼んで、レイが手すりを飛び越える。
そのシンという少年に睨みつけられたカガリはわずかに身体を震わせた。

その時―――

<敵艦補足!距離8000!>

艦内に放送と警報が鳴り響いた。

<コンディション・レッド発令!パイロットは搭乗機にて待機せよ!>
「最終チェック急げ!始まるぞ!」

にわかにモビルスーツデッキが慌しくなる。
シンは自分を捕えようとしたレイの手を振り払い、モビルスーツデッキから飛び出した。
「シン!」
レイが名を呼ぶが、彼は振り向かなかった。
「申し訳ありません、議長!この処分は後ほど、必ず!」
そう言って敬礼すると、レイもその場を離れる。
その様子を見ていたカガリに、ギルバートが声をかけた。
「本当に申し訳ない、姫。彼はオーブからの移住者なので、よもやあんなことを言うとは思いもしなかったのですが・・・・・・」
「え・・・・・・?」
カガリは驚き、シンの消えた方向を見た。
「・・・・・・何かオーブで、哀しいことがあったのかもしれませんね・・・・・・」
ニコルが呟いた。





乗員に指示を出していたタリアは、艦橋に入ってくる何者かの足音に振り返った。
「議長」
振り向けば、予想通り、ギルバートと、オーブの者。
だが、何故この場にオーブの代表とそのおつきの者のみならず、民間人二人まで入ってくるのか。
「いいかな、艦長?私はオーブの方々にも、ブリッジに入っていただきたいと思うのだが」
さすがにこれにはルーラリアも驚いた。
もう何をされても驚かないつもりでいたが、そう来るか。
ブリッジまで見せるなんて―――しかもこの非常時に―――ギルバートは一体何を考えているのだろう。
タリアが返答に詰まる中、ギルバートは彼女の様子を気にせずにいう。
「君も知ってのとおり、代表は先の大戦で艦の指揮も執り、数多くの戦闘を経験されてきた方だ。そうした視点から、この艦の戦いを見ていただこうと思ってね」
さすがに言い訳としても無理があるんじゃないかと思ったルーラリアは丁重に(振舞っている風を装い)断ろうと思った。
だが、意外にもタリアは「わかりました」と返事をした。
「議長がそうお望みなのでしたら」
少しとげとげしい言い方の裏には何か気に障るようなことがあればとっととお引取り願おうという意思が見え隠れしている。
気付いているのかいないのか、ギルバートは軽く礼を言うだけだった。
カガリとアスランがシートにつき、ルーラリアもニコルの手を借りてシートに座る。

「目標まで、6000!」
「ブリッジ遮蔽。対艦、対モビルスーツ戦闘用意!」
ブリッジ遮蔽システムにルーラリアは軽く口笛を吹いた。
なるほど、確かにこれならばブリッジを直接狙われる心配は少ないだろう。
モビルスーツに発進スタンバイの指示を出している後ろで、唐突にギルバートが呟いた。

「ボギーワンか・・・・・・本当の名前はなんというのだろうね、あの艦の?」
「は?」
「え?」
あまりにも突然きかれたため、アスランとニコルがそろって戸惑いの声を発した。
「名はその存在を示すものだ」
ピク、とルーラリアの肩が動く。
「ならばもし、それが偽りだったとしたら・・・・・・それは存在そのものも偽り―――ということになるのかな?」
ルーラリアは議長を驚いたような表情で見た。
まさか、彼が言おうとしていることは―――?
「アレックス・・・・・・いや、アスラン・ザラ君?ニコル・アマルフィ君?」
アスランとニコルは身を硬くした。
だが、彼らの驚きはルーラリアの比ではなかった。
議長は笑って言ったのだ。



「それに―――ユーラシス・アズラエル嬢」












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あとがき

インパルス君って言うと、なんだかお笑い芸人のようです。
アズラエルって、ブルーコスモスの元盟主だからなぁ、相当の混乱になるぞ、これは。(おい)