ガンダムSEED DESTINY アナザーストーリー

RUN IN A WORLD〜世界を駆ける者〜








アスラン達の乗ったザクを助けるかのように割り込んできたその機体は黒い敵機をもっていた武器でなぎ払うかのように攻撃した。
敵機は飛びのき、応戦する。
しかし、ビームを撃たれ、押されてしまう。

『・・・・・・あれは、一体・・・・・・』
「言ってる事はともかく、やってることは味方のようね」

ルーラリアはすべての機体に警戒しながらもキーボードを打っていた。

深緑色の機体は物陰に隠れながら黒い機体を援護していた。

やがてルーラリアの乗るザクに
 It hacking-completes to Gaia and Chaos 
の文字が表示された。

「意外と時間かかったな・・・・・・ふぅん、ガイアとカオスか・・・・・・じゃあ、あのつっこんできたストライクに似た色の機体の名前は・・・・・・インパルス?」

機体照合をしていたルーラリアは聴いたことのない名前に怪訝な表情を浮かべた。
ザク以外に造っていた機体はこれで4体目。
先の戦争で地球軍が作っていたXナンバーの数は5体。
もしもその時と同じだけの数を造る気でいたとしたら、もう一体ある可能性も高い。

「・・・・・・やりかねないね、あの胡散臭い議長殿なら・・・・・・」
<くそッ・・・・・・あれも新型か?ガンダム?どういうことだ?>

通信を通して聞こえてくる声がカオスのものだと言うことは画面に表示されたのでルーラリアにもわかった。
それが深緑色の機体なのか黒い機体なのかはわからなかったが、機体の動きと聞こえてくる声を合わせればカオスは深緑色の機体だとわかるのにそう時間はかからない。

<あんな機体の情報は・・・・・・アウル!>
「アウル?フクロウさん?仲間の名前かな?」

さりげなく戦闘の巻き添えを食らわないようなところに機体を移動させつつルーラリアは状況を分析していった。

「声からすると年もそう変わらないぐらいだ・・・・・・それにしても、奪取した側は3体分の情報しか手に入れていなかったの?何故・・・・・・」

いくらなんでも不確定な情報でこれだけ大それた事をするはずがない。
だとすれば、あのインパルスという機体は極秘で造られたもの―――隠し玉か。
そう考えるのが普通だが、しかし、先の大戦を経験してきたルーラリアはまた別の考えももっていた。

奪取した側は不確定な情報をザフトから貰っていた。

情報の売買はクルーゼとアズラエルがしていたことだ。
同じ事が行われていても不思議ではない。

「・・・・・・なんか、自分の考え、荒んだね。そう思わない?」
『そんな場合じゃない!』

アスランの怒鳴り声にルーラリアは軽く肩をすくめた。

「わかってますって。ただ、場の空気を和らげようと・・・・・・」
『努力は認めますが・・・・・・』
<このぉ!>
「・・・・・・え・・・・・・?」

聞こえてきたガイアからの声にルーラリアは一瞬耳を疑った。

(女・・・の子・・・?)

ガイアに乗っている者の声は間違いなく少女と取れる声だ。
奪取した部隊に少女が?
しかし、考える間もなく、突然大地が揺れ動く。

「これは・・・・・・」
『アスラン!』
『外からの攻撃だ・・・港か!?』

アスランとニコルが顔を見合わせるのが通信越しにもわかる。

『ヘリオポリス・・・・・・』

ニコルが呟いた声が聞こえた。

<くそッ・・・・・・演習では、こんなっ・・・・・・>
「・・・・・・演習?」

一瞬、ルーラリアは嫌な予感がした。
もしかして、インパルスのパイロットは、実戦経験が皆無なのではないか?
よほど過去を振り返るものでなければ、こんな戦闘中に「演習では・・・」などというはずがない。
演習と実践の違いなどわかりきっているからである。

「・・・・・・いや、まさか、実践なしなんてことは・・・・・・」

ありうる。
なにせ、この2年間、戦争なんて起きてなかったのだから。
もしもこの機体に乗っているのが2年前の戦争に参加していなければの話だが。
これは本当に通信を盗み聞きしている場合ではないな、とルーラリアは思った。
かといって盗み聞きをやめる気は今の時点ではないが。

<スティング!さっきの・・・・・・>
<ああ、わかってる!お迎えの時間だろ>

カオスから聞こえてきた会話にルーラリアはいつの間にかもう一機、水色の機体へのハッキングも完了していたことを知る。

<遅れてる。バス、行っちゃうぜ?>
<わかってると言ったろうが!>
<大体、あれなんだよ?新型は3機のはずだろ?>
<オレが知るか!>
<どーすんの?あんなの、予定にないぜ!>

言い争いをしてはいるが、そこから読み取れる情報はカオスと話している機体―――アビスのパイロットも少年のようであると言うこと、彼らが受け取っていた情報は新型のモビルスーツは3体でありインパルスについての情報はなかったこと、『お迎え』『バス、行っちゃうぜ』などの発言から彼らの背後にはそれを指揮しているものまたは仲間が控えていると言う事実だ。

<チッ・・・ネオの奴!>
「ネオ?」

新たな名に、ルーラリアは首をかしげる。
いまいましげにアビスのパイロットが呟いた名前は彼らの仲間だろうか。

<けど、放っちゃおけないだろ!追撃されても面倒だ・・・!>

カオスのパイロットが言うようにガイアはインパルスにおされ気味だ。
突然カオスは宙に向かってビームを撃つ。
貫かれた機体が爆発し、墜落する。
そのままインパルスに向かうカオスを見てルーラリアはインパルスの援護に入ろうとする。

<はっ、首でも土産にしようっての?カッコ悪いってんじゃねえ、そういうの!>

アビスもそのあとをつっこんでくる。

<ステラ!>
<!>

カオスのパイロットが誰かの名を呼んだ。
インパルスと戦っていたガイアが後ろに飛びのく。
直後、カオスの陰に隠れていたアビスがビームを発射し、インパルスはすんでのところでそれを避ける。

「どっちが操縦してる!?」

突然ルーラリアはアスラン達の乗るザクに話し掛けた。
戸惑ったような表情を浮かべるカガリだが、ニコルはすぐに意味を察した。

『アスランです!』
「じゃあ、アスラン!さっさと逃げて!ここにいたら巻き添え食ってやられる可能性が高い!元ザフト軍のエリートが二人もそろってながらカガリに怪我負わせるようなことあったらぶっ飛ばすからね!」
『・・・・・・』
「・・・・・・・・・」
『・・・・・・・・・・・・・・・』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

返事がないのが不安ではあったが、とりあえず二人がいればコックピットにビームが直撃しない限りは大丈夫だろうと思い込み、ルーラリアはインパルスの援護に入った。

まさか、アスランがこのあとあんな大胆な行動をとるなどとは思わずに。



カオスの攻撃をかわしたインパルスの後ろに跳んだルーラリアはガイアの仕掛けたサーベルをシールドで受け止める。

『何ッ・・・?』
「こちらスラッシュザクファントム、ユーラシス・エルミッシュ!故あってインパルスを援護する!」
『なんだって・・・』
「くるよ、インパルス!」

アビスのビームが別方向からインパルスを狙う。
ルーラリアの声でインパルスはそれに気付き宙に飛んで交わす。
ルーラリアはなるべくインパルスのフォローをするつもりでいたが、初めての実践と思われるインパルスの動きに2年近く戦場から離れていたルーラリアが合わせるのは無理なことだ。
対する3機は一件ばらばらのような戦いかただが、互いをきちんとフォローし合っている。

(こりゃまた、難儀ですね・・・・・・)

その時、彼女の視界の端で何かが動いた。
アスラン達の乗るザクだ。

『アスラン!』
『つかまっていろ!』
『え?うわっ!?』
「・・・・・・は?」

嫌な予感そのままにガイアから距離をおき、ジンの動いた方向を見る。

<貰ったぁーッ!>

アビスがインパルス目掛けて突っ込んでくる。
巨大仲間をインパルスに振り下ろす直前、ザクがアビスに体当たりを仕掛ける。
後方へと倒れこむアビス。
その隙を突いてアスランはザクのもつアックスをガイアに投げつけた。
ガイアはとっさにそれをシールドで受け止めた。

「逃げろって言ったのに・・・・・・」

確かにそういったことに対しての返事はなかったが、アスランはあまりにもボディーガードとしてなっていない。
国家元首が同乗していることをちゃんとわかっているんだろうか。

<このッ・・・・・・!>

アビスのビームがザクを狙う。
シールドを掲げて直撃を防いだものの、ザクは後方へと吹っ飛び、瓦礫に背中から倒れこんだ。

『くッ・・・・・・』
『うぁッ・・・!』
『カガリ!・・・・・・っ!?』

カガリの悲鳴が聞こえた。
アスランが息を飲むのがわかった。

アビスのビームが再びザクに襲い掛かる。

『アスランッ、操縦代わります!』

ニコルがそういい、ザクは寸前で飛び上がり、ビームをよけた。

「聞きたかないけど、何があった!?」
『カガリが負傷しました!出血は多いけれど、命に別状はないです!』
「・・・・・・・・・アスラン、あとでぶん殴る」

低い声で呟いたルーラリアだが、顔色が真っ青だった。
まさか国家元首に怪我をさせてしまうなんて。
命に別状はなくとも大問題だ。

「ニコル、さっさと離脱して!」

言いながらルーラリアは上空から近づいてくるディン数機に気がついた。
彼らはアビスに攻撃を仕掛ける。
ならば、とルーラリアは斧を出し、ガイアに切りかかった。
アビスの相手は彼らにまかせればいい。

だが、ガイアはそれを宙に飛んで避けるとルーラリアの乗るザクを飛び越えた。
背後を取る、と言うやり方とも違うそれにルーラリアは戸惑い気味に後ろを振り返った。
そして驚愕した。

インパルスがアビスに切りかかり、アビスはそれを避ける。
そこへガイアがつっこんでいったのだ。

「・・・・・・っのバカ!アビスはディンに任せときゃいいものを!」

ディンがアビスを、ルーラリアがガイアを、そしてインパルスがカオスを相手にするぐらいはできるはずだ。
しかし、ディンがアビスを狙っているのにわざわざそれに切りかかり逃してしまうなど、インパルスはどうも全体を見る視野にかけているようだと思わざるをえない。

それとも、インパルスのパイロットは自分一人でこの三機すべてを相手にしようとでも考えているのだろうか。

「自意識過剰、と言うよりは・・・・・・自分が頑張るから、大人しくその支援だけしてろって言われてるみたいだ」

ルーラリアは連携と言う言葉とは無縁そうなこの戦い振りを見て確信をもった。



インパルスのパイロットは、実践をしたことがない。
実戦経験の差―――それは、戦いの際に生死を大きく分けることだということも、おそらくインパルスのパイロットはわかっていないだろう。
















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あとがき

アスラン、逃げろ。ルーラは本気だ。
殴られたら吹っ飛ぶぞ。