ガンダムSEED DESTINY アナザーストーリー

RUN IN A WORLD〜世界を駆ける者〜











工場内に突然アラートが鳴り響いた。
反射的にカガリ達はそちらの方を向く。

「警報!?」
「どうした?」

周りの兵士達が一斉に警報の鳴った方へと走る。
アスランがカガリを守るように彼女の前に立った。

「何だ!?」

ギルバートが周りの兵士たちに声をかけた時だった。

突然6と書かれた倉庫からビームが打ち出され、扉が吹っ飛ぶ。
その直線上にいた人や倉庫、ゲイツが爆発した。

「議長!」
「カガリ!」
「何・・・・・・っ!?」

兵士とアスランは議長とカガリを庇うようにして彼らを伏せさせた。
爆風が彼らの立っていた場所を通り抜ける。

「くっ・・・・・・一体、これは・・・・・・?」

同じようにとっさに物陰に隠れたルーラリアとニコルは倉庫から出てきた物を見て唖然とした。
3体のモビルスーツが次々と工場内を破壊していく。

「新型が!何者かに強奪された!」
「モビルスーツを出せ!取り押さえるんだ!」
「なんだと!?」

かすかに聞こえてきた工場の人間とギルバートの声にルーラリアは内心、やはり、と思っていた。
新型のモビルスーツ―――ここまで戦力を拡大させているザフトのことだ。
新型を作っていないと考えなかったわけではない。
だが、彼女は目の前を動くそのモビルスーツを見てそんな自分の考えが甘かったと認めざるをえなかった。

アスランの手を取って立ち上がったカガリも新型と言う言葉に反応し、それに気付いた。
青い機体を見たアスランとカガリは驚いていた。

「あれは!?」
「ガン・・・ダム・・・!」

そう、強奪されたらしい3機は先の大戦で作られた特殊なモビルスーツと非常に良く共通しているようだった。
こんなものをつくっていたなんて、さすがに二人にも、勿論ニコルにもルーラリアにも予想はつかなかった。
せいぜいザクやゲイツの大量生産または同じ系列の新型、と思っていた。

「・・・・・・どういうことか、説明する責任はあると思われますが、議長」

低い声でルーラリアはギルバートを睨みつけた。

「これはユニウス条約に違反する、とまでは言いません。核が搭載されていなければのお話ですが。しかし、これは明らかに持たずともよい力!自衛のために力が要る、争いを回避するために力が要るというのであればこれほどまでの強さを持つモビルスーツなど必要はない!ザクやゲイツがあればそれでよいのではないですか、デュランダル議長!」
「ユーラシス!」

ニコルがルーラリアを咎めるように呼んだ。
彼女は公の場ではユーラシス・エルミッシュを名乗っている。
これはアスランと同じように身分を隠すためでもある。
ユーラシスは本名ではあるが、彼女はずっとルーラリアを名乗ってきたためにかえってこちらのほうが偽名として使えるのだ。
同じようにニコルはニコラス・エルミッシュを名乗っている。
ルーラリアと同じ姓を名乗る辺りは『なかなかカガリとくっつけないアスランへの嫌がらせ的なもの』としてディアッカが提案したのを採用している。
採用する方もする方だが、これで身分がばれたことがないので結果オーライだ。

「説明してください、議長!あのモビルスーツは一体・・・・・・」
「お嬢さん、今はそのようなことを議論している場合ではないでしょう。姫らをシェルターに」
「はっ!」
「はぐらかす気ですか!」
「ユーラ!」

議長は食って掛かるルーラリアを無視し、彼らをシェルターへ避難させるよう命令を出した。
それでもなお大声を出すルーラリアをニコルが押さえた。

「やめてください!今はそんなことをしている場合ではありません!」
「だけど!」
「そんな議論をしてここでこのまま巻き込まれて殺されるつもりですか!今は避難することが先決です!」

そう言われればルーラリアもおとなしく引き下がるしかない。
アスランがカガリを連れ、兵士に案内されるあとをニコルとルーラリアも駆けて行った。
しかし、案内される時、彼女はものすごい形相でギルバートを睨んだ。
ギルバートはこの時初めてルーラリアを睨み返した。
勿論、双方誰にも気づかれぬように一瞬後にはいつもと同じ表情に戻ったが、しかし、どちらもお互いを見たときの表情はしっかりと脳裏に焼き付いていた。

「なんとしても取り押さえるんだ!ミネルバにも応援を頼め!」

ギルバートの声が小さく聞こえた。



「・・・・・・ごめん、ニコラス」
「え?」
「キレかけたから。今。その所為で逃げるの遅れたし、もしも代表がそれが原因でお怪我をなさったら何のためにここにきたのか・・・・・・」
「自覚があるならいいんです。ですが次回がないようにして下さい」
「はーい」
「「・・・・・・いや、ルーラなら次回があると思う」」

小さく断定したアスランとカガリをルーラリアはキッと睨みつけた。

「代表、アレックス殿。誰と勘違いしておられるかは存じませんが、わたくしはユーラシスです。代表は、先ほどもわたくしを誰かとお間違えになられましたが」

ルーラリアは暗に偽名を使うことを忘れるなと彼らに釘を刺した。
さっきだってアスランは思わずカガリのことを名で呼んでいた。

「・・・・・・そ、それより・・・・・・」
「それより?」
「いや・・・!」

アスランはカガリの腕を取り近くの建物の中へと駆け込んだ。
目の前で深い緑色をしたモビルスーツがゲイツをビームサーベルで刺した。
爆発に巻き込まれるとしてのとっさの判断にニコルも続いた。
だが、ルーラリアだけは反応が遅れた。

「ユーラ!」
「うわああぁっ!!!」

彼らの前を走っていた兵士の叫び声とニコルの声はほぼ同時に聞こえた。

「っ・・・・・・平気!無事だよ!」

飛んできた小さな瓦礫をのけながらルーラリアは答えた。
とっさにその場に伏せてダメージを最小限に押さえたものの、彼女の右腕から血が滲んでいるのは遠目に見てもわかった。
ルーラリア自身は腕よりも酷い痛みを訴える左の膝の方が心配だったが。
カガリが周りの惨状とルーラリアの怪我を見て絶句する。

「ルーラ・・・・・・怪我して・・・・・・それに、あのガンダム・・・・・・」
「なんて事でしょうね・・・・・・もうここは進めないよ?あのでっかいのがどいてくれれば話は別だけど」

周りの施設を破壊しているモビルスーツを見てルーラリアはアスランに訊ねた。

「それなら、こっちだ!」

元きた道を引き返すアスラン。
カガリの肩を抱いて必死に走るが、その行く手を阻むかのようにモビルアーマー形態になった黒い機体が現れる。
アスランはディンがその黒い機体を攻撃してきたのを見てトレーラーの陰へと身を隠す。
ニコルがルーラリアの手を引き、同じようにトレーラーの陰へと隠れようとした。

「つっ・・・・・・」

だが、左ひざの痛みにルーラリアはその場に倒れてしまう。

「ユーラ!」
「いいからニコラスは隠れて!」

半ば突き飛ばすような形で彼女はニコルの肩を押した。

(あーあ、こりゃ膝の皿割れてるかも・・・・・・)

どこか能天気に考えながら彼女はまたその場に伏せた。
その彼女のすぐ横をディンのビームが掠め、崩れた工場の一部が落ちてくる。

「きゃああぁぁっ!?」
「ユーラ!」
「ちょっ・・・・・・ボクがいるのが見えてないのか、そこのパイロットーっ!民間人っていうかボクを殺したら末代まで祟ってやるよ!?」
「・・・・・・聞こえてる訳ないでしょう、そんな苦情が」

だが怒鳴る元気があれば大丈夫だろう。
問題なのは、とニコルはアスランとカガリを見た。

「くそっ・・・・・・」
「なんで・・・・・・なんでこんな・・・・・・っ!」

目の前でこんな戦闘が行われているのを見るのはつらいだろう。
とりわけ、今後の平和を話し合うためにここを訪れた時にそんな願いと正反対のことが行われているとあれば。

黒い機体が宙を駆け、ディンを切り裂いた。
切り裂かれたディンは工場に落ち、工場は爆発を起こした。
アスランがカガリを庇うようにして抱き寄せる。

「アスラン・・・・・・」
「大丈夫だ」

ふとニコルは倉庫から倒れてきた2つの機体に気付いた。
一体は緑色の機体、一般兵士が乗ることのできるガナーザクウォーリアだ。
もう一体は青い機体でスラッシュザクファントム。
隊長・指揮官クラスが乗ることを許されている機体だ。

なんとなく嫌な予感そのままに彼はスラッシュザクファントムに近づいた。

「・・・・・・まさか、いくらなんでもこの機体に乗るなんて事は・・・・・・」

ありえないとも言い切れない、と言った調子でニコルは少しの間その機体を見ていた。
アスラン達は黒い機体がモビルスーツ形態に戻り、周りを破壊していくのを呆然と見つめた。
だが、やがて逃げ道を探すようにしていたアスランの目がガナーザクウォーリアに止まった。
ややあってアスランは機体から目を離し何かを考えるようにカガリを見つめた。
その時―――

突然スラッシュザクファントムの目に光が走った。
ゆっくりとその機体は立ち上がる。

「・・・・・・え・・・・・・?」

どこか諦めの混ざった驚きの声をあげたニコルはその機体から聞こえた声に頭を抱えてしまった。

『それじゃ、ボクがちょっとおとりになって時間稼いでくるからちゃっちゃとお逃げくださいな』
「ルーラリア・・・・・・?・・・・・・って・・・・・・えぇっ!?」

カガリが驚いた声をあげるがもはやニコルは驚く気もおきなかった。
何かやらかすだろうとは思っていたが、まったく、悪い意味で彼女は期待を裏切らない。
期待を裏切ってくれた方がどれだけこちらの気が楽かを彼女はわかっていないだろう。

「・・・・・・あなたはどうするんですか?」
『隙見て逃げる』
「いかにもルーラリアらしい返事ですね」

いつもの口調に戻ったことから、彼女はもう医師としての立場を一時的にしろ捨てたのだろう。
それがわかったニコルはあえてルーラリアの名を呼んだ。

「そんな!」

カガリが抗議の声をあげるが、アスランがそのカガリの肩を掴んだ。

「来いっ!」
「え?あっ・・・」

そのまま逃げるのかと思いきや、なんとアスランはもう一体のガナーザクウォーリアのほうへと走った。

『へ?何する気さ、アレックス!?』
「君が想像していることだ!」
『なッ・・・・・・危ないでしょう!?何考えてんの!?』

ルーラリアが驚いたような声をあげたが、ニコルとアスランは声をそろえて彼女に叫んだ。

「「その言葉、そっくり返すさ/返します!!!」」
『・・・・・・・・・』

3人はガナーザクウォーリアの上にのった。

「乗るんだ!」
「・・・・・・ぇ・・・・・・?」

訳のわからないといいたそうなカガリの表情にアスランは思わずカガリをお姫様抱っこする。
そしてそのままコックピットの中へと入ってしまう。
ニコルもお邪魔します、と言ってその後に続いた。

アスランは手早く機体を立ち上げてゆく。
カガリは困惑気味にアスランを見る。

「お前・・・・・・」
「こんなところで、君を死なせるわけにいくか!」
「ごもっとも」

オーブの代表としても、勿論自分の大切な想い人としても。
ニコルはアスランの心理を読んでいた。
彼がオーブ代表の護衛としてではなく個人的な想いからカガリを死なせるわけにはいかないと言っている事もニコルにはわかっていた。

「大体、ルーラを一人戦わせたまま逃げるなんて・・・・・・」
「・・・・・・すみません、管理の行き届いてない子で」
「・・・・・・予想してなかったわけじゃないが、まさか本当に機体に乗るなんて思いもしなかった・・・・・・」

アスランが愚痴めいたことを口にした。

ガナーザクウォーリアが起動し、立ち上がる。
しかし、それを黒い敵機に気付かれた。

『くるよ、アレックス!』

ルーラリアの声にアスランは自分達が目をつけられたことに気付いた。
とっさにバーニアを吹かしてそのビームを避ける。

「ルーラ!援護をお願いします!」
『できればね!ニコラス、ボクの戦場での癖、覚えてる?』
「・・・・・・アスラン、援護はないものと考えてください」

ニコルはルーラリアに返事をしなかった。
代わりに盛大な溜息をつき、アスランに話し掛けた。
彼女の戦場でのクセ―――それはコンピューターにハッキングし、人の通信を傍受すると言うものだった。
勿論、仲間同士でしか会話が続かないと思って重要なことを喋っているものもいるわけで、そうした場合は大いに役立つ。
実際、彼女がそうして通信を傍受することで何度か助かったこともあるのは事実。
事実だが、この状態ではして欲しくない。
確かにこの場で通信を傍受すれば強奪部隊の事が少しはわかるかもしれないが、それ以前に殺される恐れがあるということを彼女は認識しているのだろうか。

アスランの乗った機体は黒い敵機に体当たりを仕掛ける。
シールドで黒い機体を弾き飛ばすのを横目で見ながらルーラリアは素早くキーボードを叩いていく。

「とりあえず、一機の通信とつなげればそれで良し・・・・・・目標は・・・・・・『ガイア』・・・?・・・・・・あの黒い機体かな?これでいいや」
『ルーラ、くるぞ!』

アスランの声にはっと顔を上げたルーラリアは黒い機体がビームサーベルを持ち自分のすぐ目の前まできていることに気付いた。
とっさに空中に飛んで逃げるが、ビームはわずかに足を掠めた。

黒い機体はそのままアスラン達の乗る機体に切りかかる。
アスランはアックスでそれを受け止めるが、パワー負けしている。
黒い機体が2度、3度とザクに切りかかり、それをアスランは必死に避けた。
だが、避けた背後から深緑色の機体が襲ってくる。
慌ててそれに気付いたアスランだが、シールドが間に合わず、ザクの左腕を切られた。

「アスラン!」

ルーラリアの乗るザクが深緑色の機体からアスラン達の乗るザクを庇うように間に割って入った。
彼女は深緑色の機体にそのまま体当たりした。

「大丈夫!?」
『何とか・・・!?』

深緑色の機体の背後にビームが当たるのを見てアスランとルーラリアは驚いた。
戦闘機のようなものとガンダムと思しき機体のパーツが空中で合体していく。
赤と白をベースとしたそれはストライクを思い出させた。
それはガイアとザクの間に降り立った。

『何でこんなこと・・・・・・っ』

その機体から通信を通してかすかに聞こえた声は怒りに震えているようだった。

『また戦争がしたいのか、あんた達はっ!』

カガリが息を飲んだ。
そうだ。
こんなものを盗んで何をするのか?
行き着く先は戦争―――またそうなってしまう?



―――いいえ、姫。争いがなくならぬから力が必要なのです―――



ギルバートの言葉が彼女の胸に甦る。
彼はどういう意図でこんなことを言った?
こうした争いを止めるため?
否、争いに巻き込まれた時に死ぬことのないよう力が必要となるということ。
この状況のように―――――だが、本当に・・・・・・?

『何でこんなことに?こっちのセリフよ!また戦争がしたいのかって?バカ言ってんじゃないわよ!奪う方も奪う方だし、仕方なくこんなのに乗っちゃったボク達もボク達だけれど、そんなものに乗ってるあんただって同じじゃない!この平和なご時世に何故こんなもののパイロットなんてしているの!?自衛のため、なんて大義名分振り回して戦争がしたいからそんなもののパイロットになったんでしょうっ!?』

皮肉をこめてそう言うルーラリアの声が通信を通してカガリ達にも聞こえた。



















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あとがき

・・・・・・あれだけ長い合体シーンも要点をまとめればこうなる(笑)
ルーラリアの乗ってるザクはイザークの乗ってるザクと同じです。スラッシュザクファントム。お揃い。
さてさて、頑張って『戦いを呼ぶもの』の方も書きたいですね。