ガンダムSEED DESTINY アナザーストーリー

RUN IN A WORLD〜世界を駆ける者〜







10月2日 アーモリーワン







右を見ても左を見てもモビルスーツが並んでいる。
ニコルはルーラリアを助手席に乗せそんな工場地区の中を運転していた。

「・・・・・・ホント、素敵な光景ですこと」

皮肉気にルーラリアが呟いた。
戦争をしないのであればこれほど大量のモビルスーツなど必要とはしないはずなのだ。

「戦争になっても自国を守り抜くにはそれなりの力が要るんでしょう」
「ZAFTに必要なのはむしろ力ではないと思いますけどね」

暗にこれ以上の力は持つこともないのではないかと指摘するルーラリアは腕時計をちらりと見た。

「もう少し急いで」

カガリ達の乗るシャトルがつくのにあまり時間がないという。
もう十分にスピードが出ていると言うのに、これ以上スピードを出したらまずいのではないかとニコルは思う。
大体、工場地区で80キロもスピードを出すなど常識外れとしか思えない。

「・・・・・・いいんですけどね、別に」
「何?」
「いえ、何でも。しっかり掴まっていてくださいね。」

いうなりニコルは車のスピードを思い切り上げた。
隣でルーラリアが悲鳴を上げた気がしたが、スピードを上げろといったのはルーラ本人なので気にしないことにしよう。











「ルーラ、着きましたよ」

ニコルは笑顔で車を止めるが隣からの返事はない。
ぐったりとシートにもたれかかっている彼女を見てちょっと飛ばしすぎたかとも思ったが、アスランとカガリの乗っているシャトルが着く前に間に合ったので結果オーライ。

動けないほど疲れてしまったルーラリアを抱きかかえ(こういうときに重力が軽いと言うのはなかなか便利なことだ)シャトルの着く場所まで案内して貰う。
事前にギルバートから連絡がいっていたようでルーラリアの名前を出すとボディーチェックもなしにすんなりと通してくれた。
ギルバートの取り計らいに感謝するとともに、それにしてももう少し警備を強化した方がいいのではないかとニコルは思った。

5分も待たず、シャトルが着く。
その間にルーラリアは幾分回復していた。
シャトルのハッチが開くとカガリとアスランがそこから出てきた。

「アスハ代表」

ルーラリアがかしこまって声をかけるとカガリは驚いたように彼女とニコルを見た。

「お前ら・・・・・・っ!?」
「お久しぶりです」

あまりのカガリの驚きぶりから察するにアスランからは何もきいていないようだ。
ルーラリアはちょっとアスランを睨みつけた。

「アレックス様とデュランダル議長より招待を受けまして」
「聞いてないぞ?」
「ええ、アレックス様はお話になっていないご様子ですね」

ルーラリアの受け答えにカガリがアスランを振り返る。
アスランはふっと目を逸らした。

「お会いできて、嬉しいです」
「ああ!私も、勿論嬉しいさ!」

カガリは普段と変わらぬ無邪気な笑顔でルーラリアに抱きついた。
しかし、ルーラリアとニコルには彼女がそう振舞っているように見えた。

(相当疲れてるのかな、カガリ・・・・・・)

ニコルがアスランにそっと近づくのを横目で見ながらルーラリアはカガリを抱きしめた。





ギルバートとの会談の場へと重力の軽い通路を進んでいる途中、ニコルは小さな声でルーラリアに話し掛けた。

「大西洋連邦との会談、これまでのプラントとの会談、どちらも思うような進展がなく、その心労だそうです」

誰のことと言われなくともカガリのこと、とすぐに察しがつく。
なるほど、確かに多忙すぎての疲れ、と見ればカガリの元気がなかったように見えたのも納得がいく。

「首長としての責任とかもあるよね。カガリ、倒れたりしないかなぁ?」
「万一そうなったらなんとかしてくださいね、エルミッシュ先生」
「過労なんて、薬渡して休ませるぐらいしかできないでしょ?」
「・・・・・・」

身も蓋もない言い方のルーラリアだが、彼女は本当にカガリを心配していた。
ただ、本当に過労で倒れられてもルーラリアに何ができるのかときかれれば答えられないのが事実だ。
精神的な問題の中には医学をもってしても治らない事だってあるのだから。

ふとアスランが発着ロビーの方に目を落とした。
二人がそれに気付いて同じようにロビーの方に目を落とすと、金髪の少女がこちらに視線を向けた。

「可愛い・・・・・・」

ルーラリアが呟く。
カードを口元に持っていた彼女にルーラリアは微笑みかけ、軽く手を振った。
少女は少し戸惑ったようだが、軽く手を振り返してくれた。
アスランは何か警戒するように少女とルーラリアのやりとりを見ていた。











会談の場へ向かうエレベーターの中でルーラリアは持ってきた医療器具を点検していた。
一応ここへくる前にもチェックはしたが、万一使えない医療器具が混ざっていては大変なことだ。

「ルーラリア、何も会談の場までくる事はないんじゃないか?」

カガリの言葉にルーラリアは笑顔で答えた。

「ええ。私もそう思いましたが、デュランダル議長とアレックス様が是非にと仰ったので」

目だけは笑っていない上、『アレックス様が』と言うところを強調され、ルーラリアが普通に招待されそれを受けたのだと思っていたカガリもさすがにアスランが強引に彼女を誘ったのだと思わざるをえなかった。
あくまでもボディーガードとして構えているアスランも会談が終わったら一日中謝り倒さなければと思い始めた。

視界がひらけた。
人工的につくられたものとはいえ、美しいその自然の風景にアスランもカガリもただ感心するばかりだった。






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あとがき


ルーラリアちゃん、多分アスランの事許さないだろうなぁ・・・・・・