優しさが、心配。
コートに行くと、思ったとおり忍足は岳人を無視して練習をしていた。
無視はするだろうと予想はしていたが、まさかダブルスの練習をしているとは思わなかった。
それも、ジローと組んでいるなんて。
滝はジローなら跡部達の言うことを鵜呑みにしたりはしないだろうと思っていた。
普段寝てばかりいるが、それでも結構自分の意見はもっている子だ。
思ったことはちゃんと言うし、それに対する人の意見もちゃんと聞く。
一人の話を鵜呑みにすることはほとんどない。
跡部達もそれをわかっていたのだろう。
だからわざわざジローを忍足とのダブルス練習に参加させたんだ。
岳人に―――否、自分達に話し掛ける隙を与えないために。
「・・・・・・滝ちゃん・・・・・・」
「何?」
まだ泣いたばかりで目を晴らした岳人が小さな声で滝を呼んだ。
自分達が話していると滝に迷惑がかかると思っているかのようだった。
確かに跡部や忍足はいい顔をしないだろうが。
「・・・・・・やっぱり・・・オレ達・・・・・・」
「仲良くしちゃダメなんて誰も決めてないでしょ?
跡部や忍足はそう思ってるかもしれないけど・・・・・・
オレはあいつらが決めたことにただ従うだけの人形じゃないから。
さ、ストレッチしようか」
滝のそんな様子を見て、実に強かだと岳人は感心してしまった。
そんなレギュラー陣を敵に回すような発言を、誰に聞かれるとも分からないここで言うなんて。
本人はいたって平静な顔をしているが、それは本心なんだろうか。
岳人は少し心が痛んだ。
(滝ちゃん・・・・・・滝ちゃんは怖くないのか・・・・・・?
オレと一緒にいるってことは、跡部も侑士も宍戸も、皆敵になるってことなんだぜ?)
「あ、がくときたよー」
オレはコートでストレッチをしている岳人と滝に気がついた。
「おしたりー、がくと来たから、オレはもう寝てていいでしょ?」
がくとが来たら、それでオレとおしたりのれんしゅうはおわり。
あとはがくとがおしたりとダブルスのれんしゅう。
オレはおこされるまで寝る。
さすがにかんとく来たらおきるけど。
おこられるのやだC。
でも、今日はいつもとちがった。
「何言うてんの、ジロー」
おしたりの声が、すっごくこわかった。
だれか、べつの人の声みたいだった。
「オレ、もう『あんなの』とダブルスなんて組めへんわ」
『あんなの』が何か、だれのことか。
オレにはすぐにわかっちゃった。
ししどもチョタも、それきいてわらってた。
おしたりの声って、オレ、知ってる。
むかし、『いじめ』っていうのがあったときに、そういう声をよくきいた。
だからわかっちゃった。
おしたりたちは、オレのたいせつな友達をいじめようとしてるんだってこと。
別の天使が、それを見ていた。
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