UNDO 一話
アメリカ・マサチューセッツ州
7月のある日。
その州の大学の敷地内でテニスの大会が行われていた。しかし、大学で開催されてはいるものの参加しているのは皆高校生だ。
この大会は米英の親善試合として行われており、大学側がその場を提供していた。近く高校生の世界大会が行われるとあってか、試合は白熱したものになっていた。
「あのイギリスの女の子・・・・・・金髪の方、なかなか強いんじゃない?サーブは正確だし、スピードもある」
テニスコートが一望できるカフェから不二は試合を見ていた。その向かい側で優雅に紅茶を口にするのは観月だ。
二人は青春学園の高等部に進んだ後、留学制度を利用してアメリカへときていた。当初こそ裕太の件で仲が悪く周りが近寄れないほどのオーラを放っていた二人だったが、いつの間にやらわだかまりも溶け、突然何の前触れもなく付き合いだすと宣言した。そう言ったときのテニス部の面々の反応は予想を裏切らず凄まじいものがあった。
観月は不二が興味を持ったらしいイギリスチームを横目で見た。
金髪で細身の少女と、そのパートナーである力で押しまくるタイプの少女。細身の少女は相手の苦手コースを的確に狙い、攻めると同時にパートナーの様子をしっかりと見てフォローも怠らない。対して、パートナーの少女はチームメイトの事を見もせず、ただ攻めるだけ。守りもしなければ、自分の取らない球はパートナーが取るのが当然といったような態度。わざわざ金髪の方、と言われなくても一目見ただけでどちらを誉めているかと分かるようなチーム。
「あれはパートナーがいけません。せっかくのあの子の実力を殺してしまっている」
「うん・・・・・・・・・勿体ないよね」
残念そうに言う不二は選手名簿に目を通した。
「ええと、カナリア・ローラントさんかな?」
二人が強いと言った選手の名を見つけると不二はそれを観月に見せた。金髪の少女は確かにカナリアと名があった。イギリスの上流階級の育ちで、テニスをはじめたのは13歳の頃だそうだ。それからまだ3年程しか経っていない。それでイギリス代表の選手に選ばれるなど、たいしたものだ。
「16歳、イギリスチームのダブルス選手としては最強・・・・・・・・・」
「あんなのをパートナーにするぐらいならいっそシングルスとして出したらどうですか・・・・・・・・・」
「パートナーのヘルガ・グリフさん?シングルスは連戦連敗だって。まぁ、イギリスのシングルスには・・・・・・・・・」
「レイヴ・ドーラー、シリル・スリザリア、それにユース・セレナーデ」
観月は不二の言葉の後を継いだ。
「イギリスの三本柱。有名な噂でしょう。特に彗星の如く現れた期待の星、ユースは」
観月が名をあげた三人はイギリスのシングルス選手としてとても有名である。ジュニアの世界大会でベスト4に入った実力を持つレイヴ・ドーラーと、その彼をハンデつきの練習試合とはいえパーフェクトゲームに押さえ込んだシリル・スリザリア。そしてイギリスで半年前に行われた公式大会で突然現れ優勝して以来負けなしのユース・セレナーデ。イギリスでは最強といわれる布陣で彼らは世界大会へと臨むのだ。
ダブルスの試合が終わり、シングルスの選手がコートに入る。一番手はレイヴ・ドーラーだ。
「プロとして戦っても劣らない程の実力があります。あの三人」
コートに入ったレイヴは対戦相手に軽く手を振った。余裕の表れだろうか。
「あれ?そのユース・セレナーデは?」
不二はイギリスチームが監督・ドクターを含め7人しかいない事に気がついた。カナリアは試合後、飲み物でも買いに行ったのだろうがユースの姿はどこにもない。
「余裕なんだね、きっと」
あの生意気な後輩のように。不二が言わんとしていることを観月は悟り、頷いた。
と、その時。
「A perfect game is done and shown. It does Not lose by any means.」(パーフェクトゲームをやってみせる。絶対負けない)
「Really?Youth is wonderful!」(本当?ユースってすごいのね!)
「Why?It's common.」(何で?普通じゃん)
「No!Youth, you're very strong!」(いいえ!ユース、貴方はとても強いわ!)
「I'm only singles, and my left arm broke in it a long time ago. Remember, Canary?」(オレはシングルスだけのプレーヤーだし、それに左腕は壊れたんだ。覚えてる、カナリア?)
「Sure, Youth.」(勿論よ、ユース)
「!」
自販機のある方から聞こえた声に不二と観月はそちらに視線を向けた。
金髪の少女、カナリアと目深に帽子を被った少年、ユースがカフェラウンジに入って来た。
後書き
ごめんなさい、観不二大好き人間でございます。マイナー上等。
舞台はアメリカから始まります。
マサチューセッツ州はトリビアでおなじみ「チャーゴグガゴクマンチャウグガゴグチャウバナガンガマウグ湖」があるところです。
最初に出てきたのはカナリアちゃん。ユースと一緒に試合抜け出して逢引です(嘘)
別に付き合ってるわけじゃなかとです。
セリフで読めないところは反転していただくと・・・・・・