岳人15歳はぴば。






「がっくん、誕生日おめっとさん」

忍足が大きな箱を持って来た。
岳人は笑顔で彼から一歩距離をおく。

「その箱、何?」

よくないものだ。
自分にとってよくないものだ。
忍足はそんな岳人の心情を悟ったのか、心外やなぁと呟く。

「ジローからのプレゼントや」
「あ、良かった」
「……どんだけ信用されてへんの、オレ……と、これが滝からのプレゼント」

滝のプレゼントはジローの物より小さい包みだった。
だが、去年の分厚い参考書3冊セットよりはマシだろう。

「開けていいのか?」
「ええんやないの?」

それを開け、中身を確認した瞬間、岳人は教室にダッシュした。











「お前等ーっ!」

ドアを吹き飛ばす勢いにもクラスメイト達は馴れた顔。
談笑を続ける滝とジローの間に入ると岳人は机をバンと叩いた。

「おはよう、岳人」
「おはよ…」
「じゃないっ!なんなんだ、あれはっ!」

アレ、の指す物がなんなのか滝とジローはすぐに分かった。

「プレゼント、気に入らなかったの?」
「せっかく岳人のためにかわEの買ったのにー」
「メイド服とランジェリーもらって喜ぶ男がいるかーっ!」

教室がざわついた。
メイド服にランジェリー。
男のロマンをプレゼントしたのか。
そこかしこから「グッジョブ…」だの「向日、可愛いもんなぁ…」だの有り難くもない言葉が聞こえる。

「あんなもん、よく買って来たよな!」
「ううん、跡部の権力でオーダーメイド」
「跡部エェェッ!」
「ありがたく頂戴しな」

ここでクラスのテニス部が「さすがです、跡部さん!」とほざいたので、岳人はとりあえず殴っておいた。

「まさか着ろって意味じゃないだろうな!?」
「まさか。着る以外にどんな使用方法があるのさ?」

真顔で答える滝。
岳人は友情とは何かを滝に問い詰めたい気持ちでいっぱいだった。

「岳人、プレゼント嬉しくなかった?」
「う゛っ……」

ジローが潤んだ瞳で尋ねた。
ここで嬉しくないなんて答えたら物凄い罪悪感だ。
だが嬉しいと答えるわけにもいかない。
自らのプライドにかけて。

「・・・・・・嬉しくないんだ・・・オレ、岳人に似合うようにって可愛いのつくってもらったのに・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・嬉しいよ(棒読み)」

泣きそうなジローに岳人はあっさり降参した。
宍戸に肩を叩かれ「お前も苦労するな・・・」と言われた。











「向日先輩、お誕生日おめでとうございます!・・・・・・どうかしましたか?」

授業も終り部活の時間。
鳳は普通におめでとうと言ったのに猛ダッシュで岳人に逃げられ首を傾げた。
一体どうしたと言うんだろう。
おめでとうと言われたら何か不吉な事でも起きるのだろうか。

「・・・・・・なぁ、長太郎。お前、岳人に何か言ったか?」

岳人にしがみつかれている宍戸が鳳に尋ねる。

「いえ、ただ誕生日おめでとうと言っただけで・・・・・・」
「なんか妙なプレゼントとか渡してないだろうな?」
「あ、プレゼントならありますよ」

プレゼントと聞いたとたんに、また岳人は逃げようとした。
今度は宍戸がその首根っこを捕まえて逃さなかったが。

「長太郎、その中身は?」
「え、普通にアクセサリーですよ?向日先輩が前に欲しがってた奴を・・・・・・」
「神様仏様鳳様、ありがとうございます!」

途端に涙目でお礼を言う岳人。
鳳はそんなに喜ばれるものでもないだろうと思っていたが。
宍戸は岳人を可哀想な目で見ている。
とりあえず自分の誕生日には滝とジローからのプレゼントだけは絶対に受け取らないようにしようと心から思いながら。

「それと、これは日吉からです。なんでも向日先輩に似合いそうなものを選んだらしいんですけど」
「ヒヨから?」

鳳の差し出したもう一つの包みを岳人はなんだろう、と早速開けてみる。
日吉のことだからせんべいとか饅頭とかそれぐらいかもしれないが。

出てきたのは――――――

「・・・・・・ネコミミ?」
「ネコミミだ」
「ネコミミですね・・・・・・」

あの日吉が、岳人にネコミミをプレゼント。
どういう心境の変化だ?
日吉に何があった?
っていうか正気か、アイツ!?
多すぎるツッコミどころに3人は暫く動けずにいた。

「ネコミミのメイドさんか。可愛いだろうねー」

滝の声と共に岳人は肩を強くつかまれる。
ゆっくりと振り向くとものすごい笑顔で滝とジロー(覚醒時)が立っていた。

「ほら、早速着替えようか」
「・・・・・・・・・今?ここで?」
「滝先輩、それはダメです!」

鳳が珍しく強い口調で訴えた。

「そんなことをしたら男子テニス部は写真部(被写体は岳人限定)になります!」
「アホかぁっ!」

確かにその問題もあるがツッコミどころは本来の斜め上だ。
岳人は鳳のすねを思い切り蹴飛ばした。
どいつもこいつも、肝心なところでまったく当てにならない。



そして岳人が2人に部室に強制連行されること20分。

「お待たせ〜!」

ジローのうきうきとした声に全員がそちらに注目した。
滝と一緒に部室から出てくるのはネコミミメイドの岳人。
見ただけで部員の半分が倒れた。

「・・・・・・・・・」

仏頂面だかそれもまたいいと言うか。
跡部は岳人に近づくときれいな赤いリボンの包みを渡した。

「何」
「オレ様からお前へのプレゼントだ」
「・・・・・・」

この流れからして、ろくでもないものだろう。
岳人は乱暴に包みを開けた。
そして中身は。

「・・・・・・・・・」
「猫には首輪が必要だろ?」
「死ね、アホベ」

岳人は豪華な首輪という中身ごと跡部に強制返品した。
もうここまで来ると目も据わっているし、ちょっとやそっとのことでは大声でツッコミも入れない。

「岳人」

と、突然忍足が後ろから岳人を抱きしめた。
恋人の危機に自分だけ我関せずを決め込みやがって。
殴ってやろうか。
岳人が危険思想に入りかけるが、忍足は持ち前の低い声で岳人の耳元に囁く。

「こういう岳人も可愛いで。なぁ、オレからのプレゼントはオレ自身って事で、今日はウチに泊まっていかへん?なんでもサービスしたるで、機嫌直しぃ。な?」
「・・・・・・・・・」

ずるい、と思った。
忍足は、こんなことを言われたら岳人が絶対に自分のことを許すと知っている。
やや赤い顔で岳人は頷いた。

「あ、なぁ、下着もちゃんとプレゼントされたヤツ着とんの?」

すかさず岳人の裏拳が決まった。













後日。

「やっぱり宍戸が一番まともな感覚持ってるよなー」

家に帰れば宍戸からバースデーケーキが届いていた。
それを頬張りながら岳人は跡部、滝、忍足、そして日吉への誕生日にはどんな報復をしてやろうかと考えつづけるのだった。

















あとがき

宍戸さん良い人。(まともな人)
っていうかダブルス1のあの二人って相当いい人だと思う。
他がおかしいだけかも。
岳人、誕生日おめでとう。
昨日だったけど(おーい)