レッツ☆仮面パーティ後編



















「イザーク?やっぱり彼も女装組なのか?」
「ああ?っつーか、誰だよ、こんなの考えたの・・・」

アスランをうざったそうな顔で見てディアッカは溜め息をつく。アスランは無言でラクスの方を見た。ピンクの子悪魔は緑の髪の少女(本当に少女かどうかこの状態では怪しいものがあるのだが)とケーキを食べながら談笑している。

「・・・原因は歌姫か・・・」

全てを察したディアッカはアスランと一緒に二人に近付く。

「あら、アスランと・・・」
「ディアッカ・エルスマンです。そちらのお嬢さん、私と一曲踊りませんか?」

ディアッカがラクスの隣の緑の髪の少女に手を差し延べた。少女は微笑んだだけで頷きはしなかった。

「彼女、踊りは得意ではないそうですわ。」
「大丈夫ですよ。私がリード致します。」

その時少女が更に笑みを深くした。その瞬間、アスランは少女の正体と目的を同時に察した。二人がダンスフロアへ向かうのを見て彼はディアッカに心の中で合掌した。

「・・・ニコルですね・・・」
「まぁ、やはりアスランはお気付きになられたのですね。」
「そりゃあ、昔からパーティ会場で何度も顔を合わせてますから・・・」

仮面つけて女装したところで友人の目はごまかせない。引っ掛かるのは好色なディアッカとイザークぐらいか。普段からいじめられているニコルがディアッカにどんな報復をするのか、考えずとも分かる。案の定、ニコルはわざとディアッカの足を踏みつけ、謝ってはまた踏むといったささやかな暴力を繰り返していた。

「申し訳ありません・・・私、あまり踊りは・・・」
「いえ、大丈夫ですよ、お嬢さん。」

そんなやり取りを見て面白く無さそうな顔でシャンパンを飲み干す女性が一人。銀髪を二つに分けて結んでいる彼女は足早にその場を立ち去ろうとアスランとラクスの前を横切る。

「どこに行くんだ、イザーク・ジュール。」
「!」

予想通り、その人物は足を止めアスランに近付いてきた。

「やっぱりお前か・・・」
「・・・貴様、アスランか・・・?」

二人は同時に仮面を外し、お互いを確認するとまた即座に仮面をつけた。

「ザラ家の御曹司に女装趣味があったとはな。」
「似合ってるぞ、イザーク。」
「やかましいぃっ!!!」

イザークは仮面をつけているにも関わらず般若の形相でアスランを怒鳴りつけた。

「貴様、ジュール家の次期当主に向かって女装が似合うなどといって、よもや無事で済むなどとは考えていないだろうな?」
「女装の元凶はオレじゃない。ラクスだ。」
「はい、私がこの素敵な催しを提案致しましたの。」
『致シマシタノー。』

ピンクのハロがラクスの真似をして言う。

「・・・あなたがしたことなら・・・」
「騙されてるぞ、イザーク。」

曲が途切れ、ディアッカと少女が帰ってくる。

「お疲れ。」
「楽しかったですか?」
「ええ、とても。」

爽やかに笑みを浮かべる少女のそれは最高に怖かった。


「ディアッカ様がリードしてくださったので、楽しかったですよ。」

少女は心底楽しかったという口調でディアッカを見た。ディアッカは仮面をつけていても、嬉しそうな表情をしているのが分かる。イザークが面白く無さそうに靴の踵でディアッカの足を踏みつけているにも関わらず。

「お嬢さん、今度のパーティも是非私と踊っていただけますか?」
「けど、なかなかお会いできないと思いますよ。あなたはクルーゼ隊所属ですから、休暇もとれないでしょう?」
「ん?」

イザークはこの時点で少女に疑問を抱いたらしい。何か言いたそうに二人を見つめる。ディアッカは何も気付かずに溜め息を吐く。

「そうなんだよ、あの不思議仮面さァ・・・」
「不思議仮面、ですか?」
「変態仮面でも十分だろーけど。」
「・・・ディアッカ、そんなこと言って・・・・・・」

アスランが少し青ざめた顔でディアッカを止めるが彼は全く相手にしない。

「いいんだって。みんな言ってるしよ。」
「そうじゃなくて・・・」
「僕の前でそんなこと言ったらいけないって意味ですよね。」
少女は仮面を外して微笑んだ。とても見慣れた真っ黒なその笑顔がイザークとディアッカを青ざめさせる。

「休暇が終ったら、きっと楽しいことになるでしょうね。」



「「ニっ、ニコルーっ!?」」



「はい、ニコルです。」

イザークは一瞬知っていたのか、という表情でアスランを睨み、ディアッカは蒼白な顔で口を開けたまま立ちすくんだ。アスランは胸の前で十字を切る。

「そうですか・・・変態仮面ですか・・・」
「申し訳ありません、失言です。」

思わずディアッカは敬語でニコルに話しかけた。ここで彼の機嫌を損ねれば、間違いなく自分は仮面と腹黒ピアニストによってその辺の雑魚キャラよろしく一瞬で宇宙の塵となりかねない。彼は必死だった。

「見逃してくれよー、ニコルー。」
「どうしましょうか?僕としては楽しいのでもう少しこのネタであなたを振り回したいのですが。」

悪魔がいる。
この時、イザークはそう思った。ラクスが楽しそうにニコルの前に立つ。

「本音は?」
「アスランと僕につっかかってくるうざったい生き物その二がようやくいなくなってくれるかと思うと、嬉しくて涙が溢れます。」
「あらあら、それはよかったですね。」

訂正。
悪魔達がいる。

こんな二人に囲まれているアスランに同情しつつ、イザークは仮面を身に付けその場を後にした。





































後日―――





艦内で数日ディアッカを見掛けないと思ったら、ある日突然神経衰弱状態で掃除用具入れから発見された。
何があったか、予想がつきすぎるのであえて追求しないでおいた。
そしてニコルと隊長の弱ったディアッカを見る目がとても楽しそうで、逆にアスランの視線がやけに同情的だったことを追記しておく。



              ―――イザーク・ジュールの日記より