ガンダムSEED DESTINY アナザーストーリー
RUN IN A WORLD〜世界を駆ける者〜
外伝
「しまった」 ルーラリアは読んでいた本を床に落とし、急いでカレンダーに目をやった。 遊びにきていたラクスとキラはそろって首をかしげる。 「どうかなさいましたか?」 ルーラリアはカレンダーを見つめたまま動かない。 「・・・・・・ラクス、今日って何月何日?」 「3月1日ですわ」 ラクスが答えた途端、ルーラリアは2月のままだったカレンダーを破り捨てた。 真っ青な顔で。 「・・・・・・やってしまった・・・・・・」 「ど、どうかしたの・・・?」 キラが恐る恐る訊ねた。 ルーラリアは大きく溜息をつくと黙って1日の日付を指した。 そこにはハートマークつきでこう書かれていた。 『ニコルの誕生日v』 キラは無言で目を逸らした。 要するに忘れていたのか。 同棲者の、自称恋人の誕生日を。 「・・・・・・今からケーキ作って間に合うと思う?」 現在午後1時30分。 アスランのところへ行っているニコルが戻ってくるのは5時か6時。 間に合うと言うのはケーキが作れるかということか、それともルーラリアの洋菓子つくりの腕のことか。 ケーキは作れるかもしれないが、ルーラリアの洋菓子作りの腕は間に合わない。 それだけはいえる。 「私たちもできる限りお手伝いさせていただきますわ」 「僕も?」 「ありがとう、ラクス、キラ」 一言も手伝うなんて言っていないのに・・・・・・とキラは思った。 しかし、口に出したところで状況は変わらないだろう。 「とりあえず、ケーキをつくるにあたって、バニラエッセンスと生クリームがないんだよね。キラ、ここから最強のコーディネーターであるキラが全力疾走すれば商品買って20分以内に帰ってこれるデパートがあるの。買って来て」 「・・・・・・わかった」 たまに思うのだが、彼女はこういうときのために自分を最強のコーディネーターとしてつくったのではないだろうかと疑いたくなる。 事あるごとに「最強のコーディネーターだから」という理由をつけてはキラを有効活用しようとしている気がする。 だが既にケーキを作ろうと張り切っている女性二人に逆らえるはずも無く。 結局キラはルーラリアからお金を貰ってデパートへと出かけていったのだった。 3時間経過。 「いやー、やっぱりラクスに手伝って貰って正解だった」 ルーラリアの目の前には苦心して作ったケーキ。 少し疲れた表情のラクスはキラの入れた紅茶を飲んでいる。 「お疲れ様、ルーラ」 「あ、ありがと」 キラはルーラリアにも紅茶を渡した。 「ラクスに手伝って貰わなかったら殺人ケーキの出来上がりだったよ、絶対」 「そうですわね。わたくし、何故ルーラリアのお料理があれほどなのか、なんとなくですがわかりましたわ」 調味料の間違いだとかオーブンで焼く時間だとかその他もろもろの小さな理由が重なるとあれほど大きな被害になるのだということをラクスははじめて理解した。 「では、わたくしたちはお茶を頂いて失礼いたしますわ」 「えー?まだいいじゃん。もうちょっとゆっくりしていけば?」 「いいえ、お二人の仲を邪魔するわけにはいきません」 ラクスがきっぱりとそう言うと、キラは思い出したように携帯電話を手にした。 そしてどこかへ電話をかける。 「あ、アスラン?そっちにニコルいる?え?まだ何か手伝って貰ってるの?そんなの、アスラン一人でできるでしょ?だから早くニコルをルーラのところに返してあげてよ。・・・・・・なんでって・・・・・・そうしないと、君、多分、殺されるよ?」 ルーラリアとラクス、それに後々事情を知ったカガリに。 恋人の誕生日に二人きりにしてあげない男は最低だといって攻撃されかねない。 本人達の前ではとてもじゃないがこんなことを口に出せないキラは何とかそれを伝えようとする。 しかし、アスランの鈍さはそれを上回った。 『悪い、キラ。これは今日中になんとかしないといけないものなんだ。だからもしかしたらニコルの帰りは相当遅くなると思う』 「・・・・・・アスラン、僕は忠告したよ」 『何が?』 「だからもし君が死んでも、それは自業自得だから」 『キラ、一体何の話だ?』 「さよなら、アスラン」 ガチャ。 ツー、ツー、ツー。 「・・・・・・ラクス、僕は悪くないよね」 「ええ、キラ」 「哀しいよ・・・・・・僕はルーラリアとニコルの時間とアスランの命を守ってあげられなかった・・・・・・」 「それで守れたもの(例えばキラの命)もあるでしょう?」 ラクスは肩を落とすキラを優しく見つめた。 「やっぱり・・・・・・僕は、行くよ」 「どちらへ、いかれますの?」 「アスランのところ行って、さっさとニコルを返してもらう。アスランの仕事、手伝ってくる」 「何故?あなたお一人行ったところで、(アスランの)お仕事は終わりませんわ」 「ここで(アスランの仕事)終わるの待ってたら、もっと遅くなるから・・・・・・」 「わかりましたわ。では、キラ・・・・・・これを」 ラクスはちょっと大き目のハロをキラに渡した。 「これを・・・・・・何故、僕に?」 「今のあなたには、必要な力と思いましたので。(ニコルをさっさと返してくれという)思いだけでも、力(ずくで引っ張ってこよう)だけでも、ダメなのです。だから・・・・・・キラの願いに・・・しようとしていることにこれ(アスラン撃退専用ハロ)は不要ですか?」 「・・・・・・ありがとう」 「ありがとうじゃなくて、何しようとしてるのさ、二人とも・・・・・・」 ハタから見てると暗殺計画練ってるんじゃないかと思えるほどに怪しい二人。 ルーラリアはちょっとアスランに同情した。 アスランの仕事を手伝っていたニコルはふと溜息をついた。 「不思議ですね・・・・・・」 「何が?」 「どうして僕はここにいるんでしょう・・・・・・」 自分の誕生日なのに。 「どこか行きたいところでもあったのか?」 「ええ、まぁ」 というか帰りたい。 確かアカデミーにいた時も休暇の時もアスランはしっかり自分の誕生日を忘れていた気がする。 知っていたはずなのに。 「ルーラ・・・・・・僕はここにいていいんでしょうか・・・・・・」 「別に構わないんじゃないのか?カガリや行政府の方は了承したんだし」 「そうですよね・・・・・・仕方ないことですよね・・・・・・仕事なんですから」 ニコルはまた深々と溜息をついた。 扉を叩く音がした。 アスランが扉を開ける前にものすごい勢いでそれは蹴破られた。 蹴破ったのはカガリだ。 「カガリ?まだこっちの仕事は終わってな・・・・・・」 「ニコル、もう帰っていいぞ」 カガリはアスランを無視してニコルに笑顔で話し掛けた。 「ルーラリアが待ってるだろ?アスランは放っておいていいからもう帰れ」 「え?ちょっ、カガリ!一人じゃとても終わらないんだって、この量は!」 「はい、ではお言葉に甘えて」 「ニコル!?裏切るのか!?」 帰る気満々のニコルにアスランは悲鳴のような声をあげた。 そんなアスランも、カガリににらまれて固まってしまう。 「アスラン、確かにこれだけ膨大な仕事を押し付けられては一人ですべてをこなすのは無理だろう」 「って、『ちょっとなら手伝う』って言ったらカガリがちょっとじゃない量を押し付けたんだろ!?」 「だが安い時給(日本円にして約750円)で朝から晩まで働かされるニコルの身になればこそ、私はこれ以上ニコルにこの仕事を手伝わせるわけにはいかないと判断したのだ」 「オレはそれ以上に働いてるんだぞ?衣食住の保障はするが、実質ただ働きでな」 「そしてニコルのピンチヒッターがきてくれた!」 「カガリ、オレの話わざと無視してないか?」 アスランは手に持っていた書類を一枚握りつぶしてしまった。 「まあ、そういうことで・・・・・・キラ、後はよろしく!」 「お先に失礼します」 カガリとニコルは逃げるようにその場から離れた。 後に残されたのは膨大な書類の山とアスラン。 そして遠い目をしたキラだった。 「一緒に頑張ろう、アスラン・・・・・・みんな(というか二人)でやればいいよ・・・・・・これもさ」 「・・・・・・・・・なんで今日は皆芝居がかった喋り方なんだよ」 急ぎ帰ったニコルをルーラリアは家の前で待っていた。 「お帰り」 「ただいま、ルーラ」 新婚よろしく抱き合う二人。 ただし二人とも結構童顔(というか年齢的にも子どもで通じる)なので恋人というよりは友情のそれに見えるのは仕方の無いことか。 「今日さ、ケーキ作ってみた」 「食べられるケーキですか?」 「ラクスが手伝ってくれたからちゃんと食べれるものにはなってるはずだよ」 なるほど、部屋に置かれたケーキは明らかにルーラリア一人で作ったものではない。 飾り付けから色、その他もろもろルーラリアがラクスの助言を受けまくって作ったに違いないと思わせるものだった。 「甘さ控えめにして作ってみたんだ」 「そうなんですか?」 「うん。体重増えすぎないようにって」 「・・・・・・痩せすぎも問題でしょうけど、いいんじゃないですか?」 聞くところによればイザークは10キロも痩せたらしい。 元々細い彼だからちょっと心配なのだが。 「感謝しますよ、ルーラ」 「うん。・・・・・・あのさ、ニコル・・・・・・」 「なんです?」 俯いたル−ラリアをニコルは心配そうに見た。 「・・・・・・来年は、ちゃんと一人でつくれるようにする。誕生日、おめでとう」 「・・・・・・はい。ありがとうございます」 ルーラリアの決意を半分だけ信じることにしてニコルは微笑んだ。 あとがき わかる人だけ笑ってください。 芝居くさい台詞、すべて小説版種の4巻に入ってます。 つーかなんだこれ、ヤマもオチも意味もねぇ(深読み不可)。 ニコル誕生日おめでとうってそれだけだったはずなのに。 え?アスラン? ・・・・・・・・・勿論、翌日にカガリにこってりしぼられたんじゃないですか?(笑) ※ブラウザバック推奨 |