ガンダムSEED DESTINY アナザーストーリー
RUN IN A WORLD〜世界を駆ける者〜
プロローグ〜世界を見た者〜 停戦から2年、ルーラリアとニコルはオーブで医者として生活していた。 時々はカガリ達と会いながらも二人はそれなりに忙しい日々を送っているのだった。 「ルーラリア、起きてください」 「んー・・・・・・何・・・・・・?」 「お休みのところ申し訳ないんですが、急患です」 「急患・・・・・・って、早く言ってよそれを!!!」 「言いました」 ルーラリアはかなりの低血圧で目が冷めるのに1時間もかかることもある。 普段は彼女を起こすことを諦めきっているニコルだが、急患が入った場合のみこうして彼女を起こすことにしている。 医者と言う職業柄、患者がきたとの言葉に敏感な反応をするルーラリアは急患と言われれば必ず起きてくる。 「それで患者は?怪我?病気?」 「怪我です。工事中に高いところから落ちてしまったようで、出血が酷いです」 さっと顔を洗い、ルーラリアは患者のところへ向かう。 「ルーラ、それとは別に手紙来てましたよ」 「 「いえ、今回はアスランからです」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・その辺置いといて」 アスランの名前に一瞬ルーラリアは嫌そうな表情をした。 ニコルはそれに笑みを浮かべて頷いた。 「それじゃ、僕は別室にいますから何かあったら呼んでくださいね」 患者の面倒を見るのはすべてルーラリアの役目だ。 ニコルは書類の整理や家事などをすべて引き受けている。 それでも忙しいのはルーラリアの方なのだ。 彼女は愚痴一つこぼさない。 好きでやっているのだから、と言うだけだ。 それで医療ミスなんてまったくないというのだから、彼女が如何に医者として凄腕かを見せ付けられているようでもある。 ニコルはそんなルーラリアと一緒にいられることを誇りにしていた。 「お疲れ様です、ルーラ」 「あー、うん・・・・・・」 患者の処置を1時間とたたずやり終えたルーラリアはまたすぐにでも眠れるような体勢でソファに座っていた。 ニコルがコーヒーを勧めると彼女は少しだけそれを飲んだ。 「今回はあんまり大変じゃなかったよ。出血は酷かったけど、それ以外は取り立てて騒ぐような自体じゃなかったし」 「そうですか」 「うん」 暫く二人は黙っていたが、不意にルーラリアが側の机においてあったアスランからの手紙をとった。 「なんだって?アスランからの手紙」 「カガリとのノロケ話が延々と書かれてました」 「・・・・・・」 「そんな嫌そうな顔しないくても・・・・・・いつものことじゃないですか」 「だから余計に嫌なんだけど・・・・・・なんでいつもいつもカガリとのノロケしか書くことがないのか・・・・・・」 事実、アスランから送られてくる手紙のうちカガリとのノロケ話が書かれている手紙は9割を超えている。 あとは他愛もない世間話が書いてあったりするのだが、その世間話も最終的にはカガリとのノロケに利用されてしまっている。 「これが一月も続けば書く事無くなって困るものだと思ってたけど・・・・・・」 「困らされてるのはこっちの方でしたね」 「・・・・・・初対面の時、アスランがこんな人だと思わなかったんだけどなぁ」 「それ以前にルーラは僕たちのこと女性と思ってましたっけ」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ルーラリアはばつが悪そうに顔を伏せた。 確かに初対面で彼女はアスラン、イザーク、ニコルの3人を彼らの母親と間違えたことがあった。 それはルーラリア本人がコールドスリープをしていた間の事をまったく知らなかったわけだから彼女が悪いと言うわけではないのだが。 「で、ほんとにアスランからはそれだけだったの?なんとなく、今回は『例の件』まで書いてありそうだったんだけど」 「それとなく書いてありましたよ、それも」 ニコルがそういった途端ルーラリアは封筒の中の便箋10枚というすごい数のノロケ話のうち最初の9枚を捨てた。 アスランがノロケ話以外の事を書くのは決まって手紙の最後だ。 「・・・・・・・・・・・・うわ、ホントだ」 ルーラリアはその内容に眉をひそめた。 「『アーモリーワンで行われる進水式に行く予定がある』・・・・・・そういう重要なことをさらりと書いてよこすなんて」 「『久しぶりに会いたいから』なんてもっともらしい理由つけてますけど・・・・・・」 「どうせギルバート・デュランダルから説得してくれって言われたんだろうね」 ルーラリアとニコルが言っていた『例の件』とは。 彼女はプラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルからアーモリーワンで行われる進水式に参加して欲しいと要請があったのだ。 そのときに極秘だがオーブとの非公式の会談も行われる、と知らされた。 何かあったときのために医学の知識があるものが来てくれると助かる、それにルーラリアとニコルはプラントとオーブ両方に顔が聞く、という理由からだった。 しかし、ルーラリアはそれを最初は丁重にお断りしていた。 理由は『そうした場にはやはり自分よりも技術の高いものが行くべきだし、自分は進水式にはあまり興味がもてない、何よりここでは自分を必要としてくれる人たちがいるので』と言うものだったが、彼女は『本当の理由はギルバート・デュランダルという人物が気に入らないから』とニコルにはっきり言っていた。 だが、それからもしつこく要請が来ていて、ことごとく断っていたルーラリアは最近ではギルバートからの手紙と見るや無言で捨ててしまうようになっていた。 そこにきてアスランからの手紙。 ギルバートから説得するように言われたと考えるのが普通か。 「・・・・・・電話する」 低い声で呟いてルーラリアは受話器を手にとった。 番号を押して数秒後、彼女は爽やかな声で話し始めた。 「わたくし、オーブ在住のルーラリア・エルミッシュといいます。近日行われるアーモリーワンでの件についてアレックス・ディノ様とお話したいことがありましてお電話させていただきました。はい、お願いします」 数秒後、彼女の声は爽やかさなど微塵も感じさせない声になっていた。 「行かない。絶対行かない。どんな理由をつけられようと絶対行かない」 『・・・・・・突然電話してきて、何の前フリもなくそんな事言わないでくれよ・・・・・・』 電話口からアスランの情けない声が聞こえてくる。 しかし、ルーラリアは情け容赦無く切り捨てる。 「何のつもりですかー、アレックス・ディノさん?わたくし、この件につきましては既にお断りを入れていると何度もメールでお話しましたよねー?」 『だけど、最近顔を合わせてないじゃないか。カガリも会いたいって言ってるし・・・・・・』 「ギルバート・デュランダルの胡散臭さの前には友情とはかくも儚いものであります。なにとぞご理解の程を、アレックス」 『・・・・・・ルーラ、電話口でくらいアスランでいいって・・・・・・』 誰にも聞かれない会話を続けているアスランは自分を偽名で呼ぶルーラリアに苦笑した。 だが、それだけ彼女がアスランのしたことに対してよく思ってはいないということだ。 『確かにデュランダル議長に頼まれたことは否定はしない。だけど、ルーラと会いたいとも思っていたから説得を引き受けたんだ。そこのところは理解してくれよ』 「・・・・・・理解はしても、行かない」 縋るようなアスランの声にルーラリアは幾分調子を落として答えた。 「ギルバート・デュランダルと会いたくないの」 『何でまたそんなに彼に・・・・・・』 「どこかで会った気がするから」 ルーラリアはきっぱりと答えると大きく溜息をついた。 「そんなことって思うかもしれないけど、重要なんだよ、それって。ボクの記憶力で、あの見透かしたような気分の悪い笑顔を浮かべる男を忘れると思う?」 ルーラリアは天才と呼ばれるナチュラルだ。 彼女の記憶力はコーディネータと比較しても劣らないほどで、かなり細かなところまで思い出すことができる。 その彼女が思い出すことができないのは確かにおかしいだろう。 「会話したんだったら多分忘れられないと思う。街中ですれ違っただけなら覚えてもいないよ。だから、きっとどこか重要な場所で会って、視界の端に入れた程度だと思うんだけど・・・・・・」 『これほどしつこく自分を指名してくるのなら相手はきっとどこかでルーラと会ったことがあり、それを覚えていると言うことだろう。それが胡散臭いから会いたくない、と?』 「分かってるならその件はこれで打ち切り。じゃあね」 『あ、ちょっと!ルーラ・・・・・・』 ガチャンと受話器をおくと間髪いれず電話がかかってくる。 「ルーラ、もう少しアスランと話してあげればいいじゃないですか」 「アスランとは話したいけど、これ以上この話をすることが嫌なの」 そんなにギルバートに会いたくないのだろうか。 ニコルは苦笑して電話を取った。 「アスラン、ルーラはこれ以上このことでお話したくはないそうですよ」 『そうは言われても・・・・・・オレだってルーラと話すなら世間話のほうが楽しいに決まってるけど』 「ですよねぇ・・・・・・ちょっと待ってくれますか、アスラン」 ニコルはルーラリアの方を向いた。 「あなたのお話を聞いている限りでは、ようはデュランダル議長と一対一では会わず、且つ、もしも彼と会うことになったときに周りにアナタを護衛できる人がいればいいわけですよね?」 「・・・・・・理想は会わないことなんだけど、それぐらいなら譲歩できるよ」 嫌々ながら、と言った感じのルーラリア。 ニコルは頷くと再びアスランと会話を始めた。 「それじゃあ、アスラン。デュランダル議長が緊急の場合にどうしてもルーラとお会いしたいのであれば必ずボクとアスラン、カガリを含めた4人で会う事を前提とさせてください」 「・・・・・・・・・は?」 「勿論、ルーラ自身はデュランダル議長と軽々しくお会いすることを望んでいないということも伝えてくださいね。つまりは、ルーラは医者としてそちらに行くのであってデュランダル議長とお会いするために行くのではない、と言うことをはっきりさせておいてください」 「ちょっと!何言ってんの、ニコル!?」 「はい、よろしくお伝えください」 電話を切ってしまったニコルは真剣な表情でルーラを見た。 「本当に、それが理由とは思えません」 ルーラリアは憮然とした表情のままだ。 「デュランダル議長が気に入らない・・・・・・ルーラ、あなたはそんな理由で人と会わないような人ではないでしょう?」 「・・・・・・」 追求するように聞くと、ルーラリアは髪を指に巻きつけた。 何か考え事をしている時の彼女のくせだ。 「一人で悩まないでください」 ニコルがそう言うと、彼女は頷いた。 「わかった。・・・・・・今、モビルスーツがザフトで大量生産されているのはニコルも知ってるよね?ユニウス条約で核の使用は禁止されたけれど、モビルスーツ自体は未だにその製造を禁止されていない」 「・・・・・・そうですね・・・・・・」 「ギルバート・デュランダルは平和主義者でしょう?なのに何故モビルスーツの製造をやめようとしないの?シーゲル・クラインの思想と同じく平和を望むと言うのなら、モビルスーツの大量生産なんて必要ではないと思うの。何しろ、ザフトの所有しているモビルスーツは自衛のためと言うには多すぎる」 「そして高性能すぎる」 「そう。そこまですることの意味は?彼は本当に平和を望んでいるの?」 ルーラリアは深く溜息をついた。 「・・・・・・もしも、ボクを呼びつけた理由が、そのモビルスーツに関することだとしたら、ボクはそれを後悔するだけじゃすまなくなる。というより、ボクを呼び出す理由はきっとその辺にあるんだろうね」 自嘲気味に言うルーラリアだが、彼女がそういうにはわけがある。 彼女はエターナルに乗っていた頃、フリーダム、ジャスティスと同様、高性能のモビルスーツを設計したことがあった。 使ったパーツはデブリ帯から集めたものであったり他のモビルスーツから流用したパーツだ。 勿論核エネルギーは使わなかったが、天才と呼ばれている彼女の底力を結集させたモビルスーツの性能の高さはその後の第二次ヤキンドゥーエ攻防戦において証明されている。 「でも、行くと決めた以上は行かなきゃね」 ルーラリアは明るくそういうと立ち上がった。 「医者として行くとはいえ久しぶりに出かけるんだから、楽しまなくっちゃ。ニコルと久しぶりのデート、かな?」 「ルーラ・・・・・・」 「気にやむことはないよ、ニコル」 無理矢理ルーラリアをアーモリーワンに向かわせることにしてしまったニコルは申し訳なさそうに彼女の名を呼ぶがルーラリアの方は本当に気にしない風を装っている。 「その代わり、アーモリーワンで買い物する時、代金は全部ニコルもちね」 「・・・・・・・・・・・・・・・え?」 楽しみだ、と笑うルーラリアを見て、ニコルは自分はとんでもないことをしてしまったのではないかと思った。 ルーラリアは、内心相当怒っているんだろう。 しかし、彼女を無理矢理連れて行くことにしてしまったニコルは仕方なくその条件を飲むのだった。 そして、二人はアーモリーワンへと行くことになる。 あとがき 別にルーラリアちゃんが腹黒いと言うわけではなく。彼女は爽やかです。 って事で、次の話ではついに二人がアーモリーワンへ。本編に入ります。 『世界を見た者』はエターナルに乗っていた人たちのことです。なんというか、その中のニコルとルーラリア。 あの戦争で、世界を見た者、そういう意味です。 |