「意外だわ」
「何が」

病室で、紅印と影州は向かい合っていた。

「監督、絶対にアンタのプロポーズ断ると思ってたのに」

それが実の弟に向かって言うセリフか。
影州はベッドに突っ伏した。
普通は応援するものじゃないだろうか。

「何でまたそう思ったのさ〜?」

ベッドの上の剣菱が上半身を起こして訊ねる。
病室で入院しているのは剣菱で、双子はそのお見舞いだった。

「だって、監督は大神さんって人の事が忘れられないんでしょう?」
「あの人、オレの顔見て未だに大神って人と間違えるんですよ、オカマ師匠」

猿野も剣菱のお見舞いだ。
凪は用があるとかで今回は欠席している。

「んー・・・オレ様は大神って人とは似てないから」
「どういうことよ?」
「思い出さないし、そのおかげで新しい未来が見えるんだってよ。猿野とか御柳とか犬飼とか見てると、どうしても面影被せちまうんだって」
「影州じゃびみょ〜に想い出製造機にならないって事?」
「いやいや、お義兄さん。それだとモノマネさんが機械っぽい言い方じゃないっスか」
「ニャハハ!いーのいーの、言ってることはそうなんだし。それに、オレ様、今、超幸せなの!分かるか、猿野!」

猿野に対して惚気始める影州を、紅印と剣菱は笑顔で見ていた。

「ねぇ、剣ちゃん」
「何かな、紅印?」
「幸せそうなあの子見てると、こう思わない?幸せって、ぶち壊すためにあるのよ・・・って」
「うんうん、そう思・・・思わないよ、紅印!」

つられて頷きそうになる剣菱。
紅印は一瞬、鬼のような形相になるとチッと舌打ちをした。

「アタシがここまで育てた可愛い弟を、いくら監督とはいえ持っていかれるのはちょっと腹立たしいわ・・・結婚式とか挙げたらお姉ちゃんは許さなくてよ・・・」

今の言葉に少なくともツッコミどころは三つあった。
紅印が影州を育てたわけではない。
むしろ持っていかれるのは白雪だ。
まだ紅印はお姉ちゃんではなくお兄ちゃんである。
しかし、剣菱は紅印の爽やかな笑顔を見てそれらを突っ込む気力もなく、ベッドに横になったのだった。












あとがき

紅印はブラコンだと思う。