※本編での大神さん→白雪さんの立場に、白雪さん→大神さんの立場に。
  つまり、大神さんが元キャッチャーで埼玉選抜の監督です。






「問題大有りだ。白竜だけじゃなくすべての球にな」

突如聞こえた声に犬飼と辰羅川は驚く。
自分達以外に誰も知らないはずの球に問題があるといえる人物に、心当りなんてない。
振り返った先にいたのは埼玉の監督である大神照がいた。

「あ、あなたは、埼玉の監督!?」

驚く辰羅川に笑いかけ、大神は犬飼に向き直った。

「犬飼、お前の球はまだ真の完成を見せちゃいねーな」

大神の意味深な言葉。
辰羅川がその言葉に過剰に反応する。

「犬飼君、四大秘球の事を話したのですか?」
「いや・・・」

大神は二人の様子を気にせず、話を続けた。

「お前達は・・・いや、丁度いいや。オレが直々にその球の弱点を教えてやるよ」

大神は上着を脱ぎ始めた。





そして犬飼の投げた四大秘球は思い切り場外ホームランにされた。
大神は白竜をホームランにし、呟いた。

「・・・まだ、ユキの球には程遠い・・・」

辰羅川はその呟きを聞き逃さなかった。
キャッチャーマスクを投げ、彼は大神を驚きの目で見つめる。

「あ、あなたは白雪さんを知っているのですか!?この事は私共と御柳君しか知らないはず・・・」
「ふっ・・・お前達三人のことは、よーく知ってるぜ。辰坊ちゃん」



誰だコイツ。
公園の外から三人を見ていた御柳は必死に記憶のそこから、目の前の金髪の男を思い出そうとした。
しかし、全く思い出せない。
思い出そうとすると猿野と黄泉の顔が出てくる。
突然のことへの混乱で、御柳の中の結論は一つしか導き出せなかった。

コイツ、きっとオレのストーカーだったんだ。
いや、オレ達の、だ。
最近小さな子どもを狙った犯罪が多発している。
きっと目の前のこの男も自分達に不埒な狼藉を働こうと考えたに違いない。
覚悟しろ、変質者め。
次に口を開いてすべてを告白する時、そのときこそお前の最期だ。



「教えてください!あなたは一体、白雪さんの何なんです!?」
「ユキはBIGで頼もしいチームメイトだったぜ。残念ながら、今はこの世にいねーがな・・・」

「「嘘つけっ!」」

大神の説明を犬飼と御柳が大声で否定した。

「アンタ、絶対にストーカーだろ!」
「とりあえず、アンタみたいな人が白雪さんのチームメイトなわけねーだろ」
「「アンタの言っていることはおかしい!」」

大神はたじろぐ。
どう見てもおかしいのは犬飼と御柳だ。
側にいる辰羅川も、公園の外にいる猿野と由太郎も、大神と同じ気持なのだろう。

「お前達三人はいつも十二支高校までユキを見に来てただろ!そのときにキャッチャーマスクしてたのがオレ!オレなの!」
「違う!あの人はもっと下睫毛すごかった!」
「とりあえず、もっと髪が短かった!」
「ええっと、すみません、犬飼君に御柳君。それを言うのならあなた達はもっと可愛げがあったように思うのですが」
「「のび太は黙ってろ!」」

辰羅川はその場に座り込んで地面に「の」の字を書き出した。

「アンタは子どものオレ達を可愛いと思ってストーカーしてた奴なんだ!」
「とりあえず、オレ達を連れ去って思う存分楽しんだ後に白雪さんにも手を出す気だったんだろ!」
「「あのバカ猿と同じ顔って時点で証拠は上がってるんだ!」」

ビシッ!という効果音が聞こえてきそうなほどに大神を指差す犬飼と御柳。
大神は悲しむでもなく、呆れて可哀想な子を見るような目で二人を見ている。

「・・・・・・オイ、こいつらいつもこんな感じなのか?」
「え、ええ・・・白雪さんが絡むとお二人共性格が変わってしまうのですよ・・・」

辰羅川が気を取り直した。

「ともかく、あなたが白雪さんとチームメイトであったという確証がほしいのですが・・・」
「今打っただろ、四代秘球を」
「ああ、そうですね。犬飼君、御柳君。大神監督は本当に白雪さんのチームメイトだったのかもしれませんよ」

辰羅川の理解が得られた。
常識を持って健やかに成長してくれた奴がいてよかった。
大神は心の底からそう思った。

思えば、昔から犬飼と御柳は人の話を聞かなかった。
御柳は反発だらけ、犬飼は思い込んだら一直線。
その二人がメチャクチャ懐いたのが白雪。
しかも美人で可愛い大人(小学生から見たら高校生は充分に大人だろう)ときたもんだ。
そりゃ自分にゃ懐かんだろう。

「とにかく辰坊、四大秘球はまだ未完成だからなんとかするぞ。空蝉も覚えさせる。でないと試合じゃ使い物にならねー」
「「アンタに教わることは何もない!」」



その後大神は、沖の降霊術で白雪を呼び出し、犬飼と御柳にみっちり説教させたという。










「・・・で、猿野。お前、何したんだよ。お前と同じ顔ってだけでストーカーと決め付けられるなんて・・・」
「オ、オレは何もしてねーっスよ!」
「監督、オレ、猿野はよく女装したり覗きしたりしてるって聞いたぞ」
「げっ!黙ってろ、チョンマゲ!」
「猿野、女装や覗きなんてBIGじゃねーぞ」
「う゛っ・・・」
「男なら女装じゃなく性転換しろ。覗くより堂々と行け。BIGにな」
「監督・・・は、はいっ!」
『フフ・・・大神、ちょっといいかな・・・?』









あとがき

『それ以上ふざけた事言ったら殺るよ?』と続きます。
うん、大神さんには悪いけど、やっぱり白雪さんが生きててよかったと思う。
きっと大神さんは理論的な訓練じゃなくBIGかどうかを基準にした練習にするんだろうなと思うから。
やっぱり、監督は理論をちゃんと説いてくれる人がいいと思います。