※2に続かない







ある日の空蝉練習中、御柳が大まじめで由太郎に頭を下げた。
驚く猿野と由太郎に、御柳は言った。

「オレもキャッチャーやって冥の球受けたい。むしろ冥の熱いラブジュースを全身で受けたい。だから指導してくれ」

猿野と由太郎は顔を見合わせた。
そして同時に「無理」と言った。

「なんでだよ!」
「まずバブリシャスの表現がキモい。テメーの言い方だとキャッチャーはピッチャーに対して『夜のお相手もバッチリよ、勿論アタシが受け止めてあげる』とか言い出さんばかりだ」
「いいじゃねーか、世の中には子猿やら魁由やら大雪やらが溢れてんだ!それに場合によっちゃ豹子、辰犬、桜屑、由沖、紅影だってバッチコイ、要するにオレは冥のためなら受けてるだけじゃなく熱いモンぶっかけることもできる!」
「…みやなぎ…オレ、いい精神科医知ってるから紹介してやるぞ?」

よく分からないことを叫び出した御柳から遠ざかりながら由太郎は呟く。
元々御柳の精神状態はいいとは言えないと思っていたが、これほどとは。
御柳は完全に引いている由太郎に気付きもせず、彼の手を握った。

「うわあああっ!」
「頼むっ、オレをキャッチャーに!」
「離れろよっ、みやなぎーっ!」
「…何してるのかな?」

ふと聞こえた声は天使のように聞こえた。
普段は悪魔のような行動を取っているのに、こういう時は神々しい。
由太郎は泣きながら声の主に助けを求めた。

「監督ーっ!みやなぎがっ、御柳が!」
「芭ユタは初めて聞くなぁ」
「……」
「ふふ、嘘だよ。御柳くん、村中くんから離れなさい」

白雪は御柳の首根っこを掴むと猫の如く引っ張りあげた。
こんなにデカい図体をしていると猫というより虎かライオンだ。
そのまま御柳はその場に正座させられた。



「キャッチャーがやりたいって…正気なの?」
「あのな、キャッチャーってなはなりたいって思ったからってすぐにできるもんじゃねーんだよ」

御柳の野望を聞いた白雪は双子と犬飼、村中魁に緊急召集をかけた。
選抜にくる前にバッテリーを組んでいた彼らに、キャッチャーになりたがる御柳を止めてもらおうと思ったのだ。
ちなみに沖は桃食と「死んだのに徘徊するキョンシーは面倒くないのか」について語り合っている。
双子は如何にキャッチャーが厳しいかを御柳に説き始めた。

「まず、自分の顔がキャッチャーマスクで隠されることで美しさをアピールできる機会が減るわ」
「いや、んなことはどうでもいいだろ兄貴」
「次にランナーがホームに突っ込んで来た時。どさくさ紛れでラフプレーされて身体がキズモノにされたりもするのよ」
「言いたいこと分かるけどよ、もーちょっと言葉選べよ」
「それに、キャッチャーの仕事量は一番多いのよ」
「それは一番最初に言うべきことだしょ!」

完全にボケとツッコミ役が板についた双子のやり取りに由太郎が口を挟んだ。

「それとさ、キャッチャーのリスクはデカいんだぞ」
「どんなだよ」

真剣にメモをとっている御柳が尋ねた。
由太郎は真剣な顔で言う。

「ピッチャーの投球が急所に当たる」
「ああ…あるわ」

子津との特訓を思い出した猿野がそのときの痛みを思いだし、顔を歪める。
あの痛みは経験した者でないと分からない。
しかし、正捕手であるはずの白雪と紅印は首を傾げている。

「そんなに痛いのかしら?アタシ、当たったことないのよね」
「ボクもないから分からないな」
「…なんでないんだよ?」
「影州や剣ちゃんがアタシにぶつけるわけないじゃない」
「大神のコントロールは抜群だから」

まるで恋人自慢をされているかのようだ。
ニッコリ微笑む二人は本当にキャッチャーなのだろうか。
尋ねた自分がバカだった、と由太郎は後悔した。






あとがき


恋人自慢で終わる。
珍しく出てこない白春はVer.2で大活躍します。(このサイトでの『白春大活躍』は99%の確立で御柳か猿野が被害を被ります)
っていうか御柳が異常にオタっぽくなってしまったことにちょっと恐怖を覚えました。
同時に笑いも覚えました。