※「ケンカ」とかじゃなく「仲が悪い」です。







「なに、この力の入ってない球は?」

白雪は明らかに嘲笑ととれる笑みを浮かべた。

「四大秘球なんて夢見て子どもと戯れるからこんな球しか投げられないんじゃないの?」
「そりゃ悪かったな、白雪姫」

大神もマウンドから白雪を見下した。

「空蝉なんて訳の分からんスイング開発するために真剣振り回すぐらいに頭イってる奴にはこれくらいじゃないと受け止められねーと思ったんだよ」
「なっ…」

白雪はキャッチャーマスクを脱ぎ捨てて大神に詰め寄った。

「空蝉をバカにする気?」
「お前こそ、四大秘球をバカにしたじゃねーか」
「そんな安直なネーミング、高校生にもなってバカみたいって思っただけだ」
「野球の練習に真剣持ち出す奴には言われたくねー」

そこへ駆けて来るチビッコ3人組。
打席に立っていた御柳が一番早く大神のところへ行き、援護。

「大神さんの球は最高だ!アンタにはそれが分かってないんだろ」

犬飼と辰羅川もそうだそうだと大神の味方をする。
白雪は彼らを冷ややかな目で見た。

「子どもは黙っててくれるかい?それとも、お前は子ども3人を味方につけてボク一人をいじめようっていうの?」

最低、とまで呟かれる。
大神はそれを鼻で笑った。

「被害妄想が過ぎてるぞ、お姫様」
「姫が野球をする訳が無い。人の性別ぐらいはっきり見極められないの?」
「申し訳ありません、お姫様。だいたい、その容姿が女にしか見えないのも悪いんじゃねーか」
「人のせいにするなよ。お前の目がおかしいんだ」

口論はヒートアップ。
チビッコ達はどうあっても白雪に味方なんかしないだろう。

「キャッチャーの仕事の大変さがお前に分かるの!?」
「ピッチャーだって大変だ!」
「そうだね、子どもと戯れて一球一球変な名前つけなきゃいけないんだからね。ボクにはとても真似できないよ」
「いちいち突っ掛かりやがって…ホントにお前、うっとおしいな!お前なんかいなくてもオレはやっていけるんだよ!」





「…っ!」

ガバッと白雪は飛び起きた。
全身で嫌な汗をかいている。
たった今見た夢が、すごく怖かった。
自分が大神を嫌って、大神も自分を嫌って。
怖くて、涙が溢れる。
止まらない。

「う…」
「ユキ?」

隣で寝ていた大神が白雪の名を呼ぶ。

「どうした?」

大神は起き上がり、白雪の顔を除きこんだ。
白雪が泣いているのを見ると、彼はその涙を指でそっと掬いとってやった。

「怖い夢でもみたのか?」
「…大神…」

白雪は頷く。
大神はその身体を抱き寄せた。

「…大神…」
「ん?」
「…嫌いに…ならないで…」
「はあ?」

大神は笑って白雪の左手をとり、その甲に口付けた。

「嫌いになんかなるか」
「…嫌いって言われる夢を見た…怖かったんだ…」
「そうか。けど、オレはお前を嫌いにはならないぜ」

そう言って、大神は白雪の髪をなでた。
その手は、とても温かかった。

「空蝉って、おかしな打法?真剣持ち出して練習するのは変?」
「打法は人によって違うんだから、空蝉をおかしいってんなら全部の打法がおかしくなるだろ。空蝉は、個性的ってだけだ。練習方法だってそうじゃねーのか?」
「ボクが女の子にしか見えないの、悪いことかな?」
「ユキは可愛らしい男の子。悪いことな訳ねーだろ」
「ボクのこと、うっとおしいとか思っていない?」
「ないない、絶対にない」
「ボクがいなくても、大神は一人でもやっていけるの?」
「…やっていけるけど、だからってユキと一緒に歩かないってことにはならねーだろ?オレは一人でもやっていけるけど、一人よりユキといた方がいいに決まってる」
「…ボクのこと、好き?」
「好き。大好き。ずっと好きって言いつづけても足りないぐらい好きだ。ユキは?」
「・・・好き、だよ・・・」
「それならいいだろ」
「・・・うん」

白雪は大神にギュッとしがみついた。

「・・・ずっと、好きでいてくれる?」
「ずっと好きでいさせてください」

大神はそう言って、笑った。

「もうちょっと寝ようぜ。今度は、ちゃんとオレの隣で、幸せに笑ってる夢見ろよ」
「・・・そうだね・・・そんな夢、見たい・・・」













あとがき

書いてるこっちが仲の悪さに耐えられませんでした。(マジで)
が、甘いのにも耐えられず・・・いやぁ、大雪は難しいです・・・
補足すると大神さんと白雪さん、事後ですので一応全裸です(基本)
そしてこの話の冒頭、弟に爆笑されました。
「言ってる事がどれも的を得ている」とか言って・・・うん、まぁ・・・私らもフィルターなかったら大笑いしてたかもしれない・・・(野球に日本刀って、冷静になったらちょっとずれてるがそこは可愛いのでOKしてる)
でも夢を見るのはいいことだそうで(そりゃ受験生だもの、夢見てください)