※今更ですが、犬芭による白雪氏の認識について







どうしてこんな強烈な監督のことを覚えていないんだ。
御柳と犬飼はそのことで真剣に悩んでいた。
考えてみれば、完全に覚えていないわけではないのだ。
大神さんがいて、辰羅川がいて、自分達が写っている写真。
誰が撮ったかと訊かれれば間違いなく白雪と答えるだろう。
だから、一応は覚えているはずなのだが・・・・・・

「・・・・・・記憶と、なんか違うんだよなぁ・・・・・・」

御柳が呟いた。
辰羅川に持ってきてもらった十二支高校の卒業アルバム、そこには白雪の姿が載っているはずだった。
大神の姿はまだ彼らの記憶の中にしっかりと残っているので、そのアルバムに載っていなくても構わない。

「・・・いねーな」
「な訳ねーよ!監督、確かに十二支だったんだろ?」
「・・・・・・というか、同姓同名のやつはいるが・・・こいつか?」

犬飼が指差した所には確かに白雪静山と名前が書いてあった。
が、何か違う。
長髪を結んでいない。
眼鏡をかけていない。
セーラー服だ。

「・・・・・・オレの記憶の中では、大神さんといっしょにいた人は、とっても優しかった・・・・・・」
「とりあえず・・・オレ達が二人を冷やかすと、頬を真っ赤に染めて『やだ、もう!からかわないでよ!』とか言ってくる、純情っぽい人だった・・・」
「ユキさんは優しいし、純情だよ゛ぅ?」
「それは久芒さんの視点から見た監督だ」

二人はさらにアルバムをめくる。
そしてある一点でもっと不自然なものを発見。

「・・・大神さんが四番じゃないなんて・・・」

御柳と犬飼は穴があくほどその写真を見つめた。
そこにある写真には、確かにこう写っていた。
1番 大神
4番 白雪

「・・・なんで?」
「とりあえず・・・打撃で大神さんが監督に劣っているなんて思えないぞ・・・」
「だよなぁ。だいたい、監督は四番って感じじゃねーもんな。大神さんの方が風格があるって言うか・・・」
「うん、大神の方が風格があるよね。じゃあ、ボクが四番だったら?」
「監督が四番だと舐められそうだ。あの人、女っぽいからな・・・」
「そうそう、オレもそう思う」
「ふぅん・・・で、言いたいことはそれだけかな?」

気づいた時には遅かった。
監督が来ないように見張ってろ、と白春に命令しておいたはずなのだが、彼は思いっきり餌付けされていた。
もふもふとタコ焼きを口いっぱいに頬張り、とても幸せそうな表情を浮かべている。
その前に立ち、抜刀術の構えを見せているのは白雪監督。

「げっ・・・」
「監督・・・」
「大神が一番を打っているのは『男ならなんでも一番を目指す』から。ボクが四番なのは、大神の推薦。他に質問は?」
「・・・その刀、御立派ですね・・・」
「うん、磨いてきたから切れ味抜群だよ」
「・・・オレ達、切られますか?」
「うん、ボクが四番でも舐められなかった理由を教えるためと、ちょっと刀の試し切りをね・・・」
「「それ、遠慮していいですか?」」
「だめ」

絶叫が部屋に響いた。
たこ焼きを飲み込んだ白春はそのまま部屋を出て行ってしまったために何があったのかは分からないままだが、その日以来、犬飼と御柳が白雪に対して異常なまでに大人しくなったという。






あとがき

いじめ。
ユキさんに四番を打って欲しいという数人の願い(妄想)により生まれた文章。