※このお話では犬飼と御柳が結婚を前提のお付き合いをしています。
※沖君の助力で大神さんの霊が降臨なさっています。







犬飼と御柳の前に現れたのは皇帝ペンギン。
くぇっ!と元気よく鳴き声をあげる。
のたのたと寄って来るペンギンを見て御柳は笑った。

「ははっ、何コイツ。かわいいー」
「いや、とりあえず…『かわいいー』じゃねーだろ…」

ここ、風呂場だぞ。
ペンギンは寒いところ好きなんじゃないのか。
御柳はペンギンに手を伸ばす。

「くぇっ?」
「こっちこいよ」
「くえっ!」

てけてけ。
てけてけ。
ペンギンが御柳の前に来た。
そして―――

「くえええぇぇ!」
「ぎゃああああ!」

ペンギンのくちばしが御柳の手のひらを突っ突く。
慌てて手を引っ込めた御柳だが、手のひらは傷つけられていた。

「っのヤロー!鳥鍋にしてやろーか!?」
「くぇー」

えっへんと胸を張るペンギン。
御柳はペンギンを忌々しそうに睨んだ。
この性格、白春によく似ている。

「何なの、今の悲鳴は?」

満を持して紅印が登場。
その手に防水加工のビデオカメラが握られているが、敢えて見なかったことにする。
ツッコミも入れない。
が、赤く染めた頬に手を当てられてはさすがに無視するわけにもいかない気がする。

「あら、可愛いわねぇ」
「それはオレのアレか?芭唐のアレか?それともこのペンギンか?」
「ぜ・ん・ぶ。決まってるじゃない」

やはりか。
と言うか見るな。
芭唐はオレのものだとばかりに犬飼は御柳を抱き寄せた。
これ以上可愛い恋人が他人に視姦されるのは我慢がならない。

「このペンギン、どうしたの?」
「いきなりオレをキズモノにした」

御柳が出血する手を見せた。
ペンギンはますます誇らしげに胸を張る。

この瞬間、御柳の中で夜食は鳥鍋に決定した。





「いや、だから、まずはこのペンギンが何処から沸いて出たのかを検証してだな」
「関係ねーよ!今すぐ鍋にしてやる!」
「お前、アレ見てそれを言えるのか」

鳥鍋に反対する影州は御柳と言い争っている。
その影州が指差す先にはペンギンの後をヨチヨチと追っかける白春。
腰痛はどうしたのか。
きっとペンギンが癒したのだろう。

「くぇー」
「くえー!」

ペンギンの鳴き声も真似してご機嫌だ。

「こんな可愛い奴を鍋にしようなんて、御柳は最低ング」
「ぺー」
「アンタな、オレの手を見てそれを言えよ」
「御柳は血も涙もないヤツだから気にすんな゛」
「今まさに出血を止めているところよ、白春ちゃん」

御柳の手に包帯を巻きながら紅印が言う。
流石にこれではペンギンの無罪を主張するわけにも行かない。
が、そこで無罪を主張してこそ白春だ。
一人健気にペンギンは御柳を傷つけていないと主張しつづける。
どう見てもペンギンが悪いのだが。

「オメェ、御主人は何処さ行きングだ?」
「くぇー」
「『くぇー』じゃわかんないングよ゛ぅ」
「屑桐、あいつの精神判定を頼む」

クワットロが本気でそう言った。
そこへかけてくる足音。
全員が何か嫌なものを感じて廊下のほうに目を向ける。

「今の声は!?」

ばんっ、とドアが開けられる。
白雪だ。
走ってきたために浴衣から白い肌が少し見えている。
影州、虎鉄、小饂飩、猿野の目が光ったが、次の瞬間には全員が不自然なほどに目を逸らした。

「あー、ユキさん!見て見て、可愛いペンギンだよ゛ぅ!」
「くえ!」

白春がペンギンの右のツバサ?を持ち上げる。
白雪はそれを見た途端にぱっと笑顔。

「ビッグフット!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」

ビッグフット。
確かに白雪はそう言った。



「もう、本当に探したんだよ。勝手にいなくなったらだめじゃないか」
「ぺー」

ペンギンの頭をなでなでする白雪。
白春がオラも撫でてー、と白雪によっていく。

「・・・あの、監督」
「何かな?」

綺麗な笑顔だ。
猿野は思わず昇天しかけた。

「ビッグフットって・・・名前・・・?」
「うん。いい名前だと思わない?」

そこは頷くべきなのか。
それとも笑うべきなのか。

「・・・名付け親は?」
「ボクだよ」

白雪静山22歳(推定)、ネーミングセンス皆無疑惑浮上。

「大神がBIGなこと好きだったから。だからBIGってつく名前を考えたんだよ」
「・・・もし、名前にビッグって入れなかったらどんな名前に?」
「ゴンザレス」
「・・・・・・・・・」

どう思いますか、大神さん。
御柳と犬飼からの視線を受けた大神(の霊)は大きく頷いた。

『ユキらしい名前だと思うぞ』

誉め言葉ではないだろう。
いい名前とは一言も言っていないのだから。
もしかしたら誉めているのかもしれないが。

「じゃあさー、大神さんだったらどんな名前付けるの?」
『知りたいか、御柳』
「そりゃー・・・」

恋人がこれだし、もしかしたら更にその上をいく変な名前が好きなのかもしれない。
大神さんに限ってそれはない、と思い込みたい二人だった。

『娘なら小雪。ユキちゃんみたいに可愛い子なら名前に小さいとか入ってもかまわねーよ。中身はBIGに育ててやるからな』
「すっげー、さすが大神さん!」
「言うことがカッコいい!」

目を輝かせる御柳と犬飼を、全員が無視した。
が、全員が「娘限定かよ」と心の中でツッコミを入れるのを忘れなかった。

「ああ、小雪か・・・可愛いなぁ・・・ねぇ、大神。この前、レッサーパンダ飼いはじめたんだけど、その子に小雪って名前付けていいかな?」
『おう。ユキ、動物好きだからな。そういえばリスのオゴポゴとナマケモノのネッシーは元気か?そういや、小さいパンダにモケーレムベンベって名前付けてたよな』
「うん、みんな元気だよ。この合宿があるからビッグフットとレッサーパンダ以外は近所に預けてきたけど」
「それはもう好きとかじゃなく動物園レベルだと思う気」
「そもそも未確認生物の名前を付ける意味は何なノ?」

録と桃食のツッコミをものともしない二人。
ふと思い出したように白雪が言った。

「そうだ。全然関係ないんだけど、明日の練習、午前中はお休みだよ」
「そういう重要な事こそ先に言ってください、監督」

ビッグフットなんて探している場合じゃないだろう。
牛尾はあきれて言った。
ビッグフットは白春とじゃれている。

「ボクとしてはキミ達に練習に励んでもらいたいんだけれど、ほら、そうもいかないところってあるだろう?」
「だからビッグフット探してる場合でもなかったと思うんだけど」

今度は由太郎がツッコむ。
しかし、そんな彼も白雪がにっこりと笑って手元から出したものに絶句し、青ざめたのだった。

「明日の午前中は『コレ』だよ。キミ達、まさか選抜に気を取られてて学生の本分を忘れているんじゃないだろうね?」








あとがき

・姫様の憂鬱=大神さんの次に大事な者をなくす=じゃあペットで
・ペット=可愛いもの=あ、白雪さんが雪女(違)だからペンギン(決定)
未確認生物は検索かければたぶん色々でてきます。
むしろユキさん=ペンギンと戯れる、と言うような・・・でも80センチもあったらもうペンギンはふわふわのヒナじゃないのですよね・・・