※このお話では犬飼と御柳が結婚を前提のお付き合いをしています。







「はぁ…」
「……」

聞こえてきた溜め息に、空蝉の練習をしていた猿野は思わず手元が狂った。
危うく御柳の頬に刀傷をつけるところだった。
だが、御柳は猿野に何も言わず茫然とし、由太郎も凍り付いている。

「はぁ…」

そして二度目の溜め息で猿野は刀を落とした。
畳に刀が突き刺さるが誰もそれを気にしない。

「はぁ…」

三度目。
御柳は小さな悲鳴をあげて壁際まで逃げた。

「か、監督が…溜め息ついた…三回も…」

まるで天変地異の前触れのような出来事。
あの白雪が溜め息なんて。
さっきまで競馬で大神とイチャイチャしていたはずの白雪が。

「おっ、落ち着け御柳!これはきっと『あの日』だ!」
「そ、そうだ!女がだるくなったりイライラしたりする『あの日』だ!」
「…猿野、御柳…監督は男だぞ…?」

錯乱しかける二人。
ここで自分まで錯乱してしまえば誰もこの状況を収拾できない。
由太郎は本気で自分がしっかりしなければと思った。

「監督っ、一体どうしちまったんだよ!?」
「え……何が…?」
「何がじゃなくて!」
「別に…いつものボクだよ?……はぁ…」
「いつもの監督は何か企んでる時以外に溜め息ついて窓から外を見たりしないっ!大体、今の監督、この世の終わりみてーな顔してるじゃん!」

由太郎の言葉に猿野と御柳も頷く。
今の白雪はおかしい。

「何かあったなら言ってくれよ」
「溜め息ばっかりついてるなんてアンタらしくねーじゃん」
「うん…」

猿野と御柳の言葉を聞いた白雪の目から涙が零れる。
3人は場にそぐわず、その光景をすごくキレイだと思った。
…が、今までの白雪の性格を思い起こし、萌えと同時に寒気も感じた。

「じゃあ、相談…しようかな……あのね…」





「で、言った言葉が『ボクのビッグフット知らない?』だぜ?」
「…猿野、お前もう少しまともな嘘吐けYo…」

後輩が持ち掛けた相談を虎鉄はたった一言で済ませた。
猿野は猛然と抗議する。

「確かに言ったんスよ、監督は!ビッグフットって!」
「そりゃ監督がイカれたかお前が聞きまちがえたかのどっちかだしょ」

影州も猿野の言うことを信じない。
まぁ、いきなり伝説の怪物の名前出されて疑わない方がおかしいが。

「キーホルダーとか携帯ストラップの話じゃないの?」

桃食とゲームをしていた兎丸が口を挟む。
由太郎は首を振る。

「どうもペットらしいんだけど…」
「雪女がビッグフット飼ってるってギャグとしか思えないよ」
「オレ達もさすがにありえないとは思ったんだぜ?けど…」
「監督が言うにはまだ子どもだから80センチぐらいだって…」

十分デカいわ。
絶句する一同。
紅印が首を傾げる。

「ホントにそれ、足の大きさなの?」
「ビッグフットって言うくらいだから…そうじゃねーのかな?」
「大型犬とかなら種類の方言うんじゃないかって思うんスよ、オカマさん」
「そうね…だけど…」

「犬て言えば、犬飼と御柳はどしたノ?」

桃食が尋ねる。

「ミヤと一緒にお風呂行ったんじゃないの?」

録が心底嫌そうに答える。

「そのままビッグフットに踏み潰されれば良さ気」
「おいおい、そんな物騒な事思ってても口に出すなYo」
「本当はアンタだってそう思ってる気だろ」
「当たり前Da。で、どうすRu?」
「お風呂場以外を全部探せばいいんじゃないかしら?」

本当はお風呂場こそを一番探したいんだけど・・・と言う紅印を無視し、何人かずつでビッグフットを探しにいくことにした。

「オラも行くぅ〜!ユキさんのビッグフット探しングするぅ〜!」
「はいはい、白春ちゃんは腰が痛いんでしょう?無理させるわけにはいかないわ。ここはアタシ達に任せてゆっくりお休みなさい」
「・・・・・・兄貴があのセリフ言うと、すっげー微妙だな・・・・・・」
「紅印、なんかヤラシイヨ」

競馬で腰を痛めた白春はお留守番だ。





ところかわってお風呂場。
邪魔も入らぬところで今度こそ本番。

「芭唐・・・もっと動けよ」
「や・・・め、冥・・・が・・・・・・動いて・・・」
「いつもオレだけが動いてるだろ。とりあえず・・・お前も自分で動いてみろ。風呂ん中ならそんなに負担もない・・・大丈夫だ・・・」
「っ・・・」

ぱきっ。

「「・・・・・・」」

デジャヴ。
またいいところを邪魔されるのか。
しかも今は本番中だというのに。
一瞬考えた後、犬飼はまぁいいかと動き出す。
御柳は突然の犬飼の動きについていけず、声を上げてしまう。

「あんっ!やっ、冥ィ!」

慌てて口を塞いでももう声は抑えられないわけで。
偶然風呂場の廊下を通りかかった紅印が聞き耳を立てていることなど二人は知る由もない。

「ぺー」

そこに聞こえた間の抜けた声。
一体なんだ。
少なくとも白春でないことだけは確かだ。
声に気づかずにイってしまった御柳の中から自身を引き抜いた犬飼は声のしたほうをじっと見る。

「はぁ・・・良かったァ・・・」
「・・・ああ・・・」
「やっぱり冥、大好き。さっきの、浮気とか疑ってねーから・・・冥?」
「・・・なんかいるぞ?」

犬飼の見る方向を御柳も見た。
がさがさ・・・と音がしたと思ったら何か出てきた。
一瞬、犬飼と御柳は夢かと思った。

「何だよ、これ・・・?」
「・・・とりあえず・・・ペンギン・・・?」











あとがき

さて、白雪のビッグフットとは一体何なのか。(ここまでクイズにならない話も珍しい)
猿野達が言っているビッグフットは、伝説の怪物ですね。足がでかいの(そのまま)
しかし、溜息つこうがどうなろうが、ウチのユキさんのボケっぷりはすごいです。ビッグフットって言わずに○○○○って言えばいいものを。