※このお話では犬飼と御柳が結婚を前提のお付き合いをしています。







「ほらほら君達、もうバテちゃったの?」

女ったらし+女ったらし=すぐバテちゃった。
虎鉄を背負った影州は現在断トツで最後尾(兎丸・白春ペアを除いて)。
何故こんなにバテるのだろう。
一応影州の体力はある方なのに。
見下ろして笑う白雪の表情も何だかいつもと違う。
まるで爆笑しそうになるのを必死に堪えているような…

「…おい、トラ。そのリュックの中身、ホントに砂だけか?」
「Ha?」

やけに重いと思ったんだ。
影州の言葉からリュックの中身を調べた虎鉄は絶句した。
「…ダンベル入ってまSu…」
「………」

二人は何とも言えない顔を見合わせ、白雪にそっと視線を移した。
白雪は二人と視線を合わせようとしない。

『ユキ、張り切っていくぞ』
「うん」
「ちょっと待てエエェェッ!!!」
「アンタら、止まReーっ!」
「ふふ…風が気持ちいいな」
「白雪ぃーっ!」

このままダンベル投げ付けてやろうか。
虎鉄と影州にそう思わせるほど爽やかな笑みを残して大雪ペアはさっさと前に走っていった。
幽霊だから疲れ知らず。
この瞬間、二人は本気で白雪殺害計画を考えた。
もっとも白雪の場合、死んだら大神とずっと一緒だとか言い兼ねないが。



「中宮くんは体力強化が課題だからちょっと重りを多くしたんだけど、あんなに早く気付かれるなんて」
『リュック受け取った時点で虎鉄も気付けって話だけどな』
「うん、そうだよね。次は…あ、犬飼くん達だ」

前方に獲物発見。
桃食は背中に乗らずに肩車されている。
その隣を行くは猿野・紅印ペア。
こんなに後ろの方にいるなんて、どうしたことか。

「ねぇ、お猿ちゃん。アタシも肩車してあげても良くってよ」
「全力で勘弁してください!」
「あら、つれない。それじゃあワンタン、あなたがお猿ちゃんの上に乗ってちょうだい。アタシは犬飼くんの上でも下でもイケるから。ね、そうしましょ」
「っ…とりあえず、冗談じゃねぇ!」
「アイヤー、紅印、またフラれたネ」
「いやぁね、アタシは別に犬飼くんのアレが当たる感触を楽しみたいだけなのに」
「尚更嫌だ!オレだって芭唐のアレの感触がいいのは知ってるが、アンタとなんざ想像もしたくねぇ!」

ギャンギャンと騒ぎ立てる4人。
なるほど、どうやら紅印は犬飼達を狙ってここにいるらしい。

『犬飼、モテるなー』
「あ、大神さん!」

パアッと顔を明るくさせて犬飼はシッポがあったら思い切り左右に振らんばかりに嬉しそうな声を出す。
犬だ。
猿野と紅印、桃食は同時に思った。

『お前、御柳と付き合ってんだって?大変だろ、あのじゃじゃ馬と付き合うのは』
「うん!けど、オレと芭唐ならお似合いだとか思わない?それに、芭唐は生意気だけどすごく可愛いんだ!」
「ちょっと犬飼サン?しゃべり方おかしいデスヨ?」

チームメイトの意外な一面。
猿野は思わず敬語を使って話しかけてしまった。

「ちょっと大神。早く行こう」

犬飼を怒りと嫉妬のこもった視線で睨んだあと、白雪は言った。

「犬飼くんは中宮くん達と一緒に走らせればいいじゃないか。ボクは監督として他のみんなの事も見て回らなきゃ」

嘘だ。
ただの嫉妬だ。
なんて心の狭い。

「オレ、大神さんには負けない!追いついて、追い越してみせる!」
「うるさいよ、犬飼くん」

雪女を彷彿とさせるような底冷えする白雪の声。
さすがの犬飼も白雪を怒らせたことに気付いたようだ。
おそらくその原因には気付かぬままで。

「あれだけ大神とお似合いだったボクのことは忘却の彼方だったのに。大神さん、大神さんって。キミ、試合に使ってもらえるからってちょっといい気になりすぎじゃないのかな?」
「あ、あの…監督…?」
「猿野くんは黙っててよ。犬飼くん、キミには御柳くんがいるんだろう?なのに大神も手に入れようとか考えて…恥ずかしいことだと思わないの?」

監督の被害妄想の方が聞いてて恥ずかしいです。
喉まで出かかった言葉を紅印と猿野は飲み込んだ。

「そんな悪い子にはちょっとばかりのお仕置が必要かな」

キラリと光るは腰に差した日本刀。
紅印と猿野はさり気なく犬飼達から離れた。

「…ひ、左頬に十字傷ぐらいで勘弁してください…」
「何言ってるの。そんな傷害罪適用されそうな真似…ボクはしないよ」

あからさまにほっとする犬飼。
だが、他の3人は聞き逃さなかった。
今、白雪は確かに「ボクは」と言った。
下手人は誰だ。
白雪は大声で叫んだ。

「御柳くーん、犬飼くんが浮気してるよーっ!」

下手人決定。
先を走っていた御柳が全力で引き返してくる。
上に乗っている由太郎は完全に諦め顔だ。
哀れなり。

「冥っ!?浮気ってなんだよ、浮気って!」
「とりあえず芭唐、オレはそんなことしない!大体、こんなトラブルメイカーの言うこと信じるな!」
「だってボク、見ちゃったし。大神に迫る犬飼くんを。それから、中宮くんからも迫られてたなぁ・・・」
「大神さんはいいけどオカマはダメだ!」
「あら、アタシは二人同時でもいいわよ」

よくない、よくない。
ともかくもここで言い争いをしていれば負けもとい罰ゲームは確実。
何しろ波風立てた白雪は日本刀を御柳に預けてさっさと先に行ってしまったからだ。
猿野と桃食は一瞬アイコンタクトを交わして二人同時にパートナーの背中から飛び降りた。

「ももっ!?」
「ちょっと、お猿ちゃん!?」

ビックリする互いのパートナーに向かって二人は親指を立って爽やかな笑顔を浮かべた。

「先行くヨ!」
「オカマ師匠、アンタの恋、応援してます!」

つまり裏切ったわけである。
猿野は桃食を背負うと全力でその場から逃げた。
由太郎の「汚ねーぞ!」という叫びを無視しながら。



が、一番汚いのは絶対に白雪だよなぁ・・・と猿野と桃食は同時に呟いた。














あとがき

最低だな(笑)
現時点で罰ゲーム決定:白春
おそらく罰ゲーム決定:犬芭、紅印、由太郎(巻き添え)
次回、ついにゴールするのか。するんだろうな。
白雪姫の憂鬱編に入りたいです。
そうすれば白春も復活します。たぶん。