※このお話では犬飼と御柳がもういいよねこの説明
※大雪要素濃いです






「合宿で夜って言えば怪談話だよね」
「ぎゃああああっ!」

電気を消した暗い部屋。
兎丸が自分の顔を下から懐中電灯で照らす。
驚いた影州は腰を抜かしかけた。

「なっさけないなー」
「おおおおおおお前エエエェェェェ!!!!」
「スバガキ、止めろって。お前のそれ、マジで怖ェんだからよ・・・」

猿野が影州に同情した声で言った。



「まぁ、そんなわけで各校に伝わる七不思議とかを話そうよ企画なんだけどね。ほら、そこの年中冬型さん。起きて」
「う゛〜・・・・・・」

眠い目をこする白春を無理矢理に起こして、兎丸は蝋燭に火をつけた。

「まず最初は華武高校からね。はい、御柳君」

蝋燭を受け取った御柳は暫し考えた。
口を開こうとした時、白春がボソッと呟く。

「・・・これでつまんね゛ー話なんてしでみろ。御柳、オメェ、明日の朝日浴びれんくすんぞ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・真面目に話しマス・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

コホンと一つ、咳払い。

「えーっと、これは野球部に伝わる話なんすけど・・・なんでも、菖蒲監督の」
「ストップ!!!」
「あ?」

兎丸と影州が本気の形相で御柳の言葉を遮った。
どうして二人がそんなに必死になるのか分からない御柳はきょとんとしている。

「菖蒲監督関連は止めよう!?ね!?」
「何で」
「お前しらねーのか!?華武の監督がらみの怪談を話すと、翌日神隠しに遭うって話を!」
「・・・・・・・・・オ詳シイデスネ」

そんなことはなかろうと笑い飛ばせない何かを御柳は感じた。
では他に何か怪談があったかと考え、バットの墓場にまつわる話を思い出す。

「ウチのバットの墓場知ってるか?あそこに長年放置されたバットが、ある日忽然と消えたことがあったんだよ。あの山が全部、一晩にしてだぜ?」
「捨てられたんじゃなくてカ?」
「だって、誰に聞いてもしらねーって言うし、警備員が見回ってっから不審者とかいたらわかるじゃねーか。けど警備員は誰の姿も見てないって言うし」

バットの祟りって話もあったなぁ・・・と録は遠い目をした。
あのバットが何処へいったか、真相は分からないままだが。

「だからアレは妖精さんが壊れたバットを直しングしようとして持ってったっつってんだろ゛!」
「アンタの頭の中はどれだけファンタジーなんすか」

御柳は白春に怒鳴られながら蝋燭を桃食に渡す。

「えとネ、朕の学校は創立からまだ日が浅いから怪談はなかなかないのヨ。でも、ちゃんと怪談はあるネ」

桃食はニタリと笑う。
その顔はいつぞやの映画に出てきたキョンシーみたいで、全員がちょっと怖くなった。

「アレは、そう・・・朕がまだ一年の頃だたヨ・・・・・・朕は、雀と一緒に夜の校内を探検していたネ・・・・・・そうしたら、誰もいないはずの音楽室から・・・・・・」
「ピアノの音が聞こえたとか言うありきたりなオチだったりしてNa」
「・・・・・・・・・」

桃食の目に涙が浮かぶ。
どうやらそういうオチだったらしい。
気まずい空気が流れる。

「・・・わ、悪ィ・・・・・・」
「そんなに言うならお前もあの場にいたら良かたネ!朕はホントにホントに怖かたんだから!」

今の桃食の方が怖いということは言わない方がいいのだろうか。
バシバシと虎鉄の頭を叩き泣き叫ぶ桃食は近寄りがたいものがある。
ちなみに雀がちゃんと蝋燭を持っているので危険はない。

「まぁ、これで怖がる奴も今日びいねーと思・・・」
「あう゛〜・・・・・・」

御柳は横に座っている白春が震えながら必死で怖くない顔をしようとしているのを見て続きを言うのを止めた。

「あ・・・今、いるかも・・・」

そこへ来て沖がぼそっと呟くものだから、白春はヒッと息を飲んだ。

「・・・い、いる・・・何・・・?」
「御柳の後ろ・・・犬飼の隣・・・に・・・・・・猿野に似た・・・霊・・・」
「「大神さんか!?」」

犬飼と御柳の声がハモる。
御柳は白春を突き飛ばして振り向いた。
そこにいたのは確かに大神。
微妙に透けて見えるのはこの際気にしない。

「大神さん!」
「大神さ〜ん!」

二人同時に大神に抱きつこうとして―――
ガツン!

「「ぐわぁっ!!!」」
「・・・霊に触れると思ってんの?」

まさか本気で抱きつこうとするとは思わなかった。
兎丸の見下したような視線が非常にイタイ。

『おいおい、お前等大丈夫かよ。相変わらず落ちつきがねーな』
「大神さん・・・」

懐かしさに頬を染める犬飼。
御柳なんか半泣き。
そんな後輩達の様子を見て、こんなの見せたら自分の恋人が怯えだすかもしれない可能性を感じた牛尾と屑桐は遊びに来ていた司馬と泣いていた白春の視界を手で覆った。

「怪談話・・・面白そうだったから・・・なんか来たんでしょ・・・」

ぼそぼそと呟く沖は一人あやとりに興じている。

『そうだ。それと久しぶりに犬飼達の顔も見たくなって・・・』
「大神?」

バン、と開けられた部屋の襖。
そこにはメチャクチャ眼光を鋭くした白雪が立っていた。

『ユキちゃん!久しぶりだな、元気・・・』
「どうしてボクよりも先に犬飼君たちに会ったのかな?」

ここまで底冷えするような声は聞いたことがなかった。
白雪は見た感じ、かなり怒っているように見える。

「ボクよりも彼等に挨拶をするほうが先だと思ったのか?ボクはお前がいなくなってから1日たりとも欠かすことなくお前の写真に向かって語りかけたり、月命日にはお墓参りしたり、お前との間にできた子だってちゃんと育てていたのにこれはあんまりだと思わない?」
「え、大神さんに子どもなんていたっけ?」
「御柳君、黙らないとこの真剣で短冊の代わりに君を斬るよ」

きらりと光る真剣。
そんなことをすれば明らかに銃刀法違反とか傷害罪とか場合によっては殺人罪とか適用されるという考えは白雪の中にはないのだろうか。
恋は盲目、白雪はまさにそれだろう。
っていうか毎日写真に話し掛けるって。
もう4年も経つのに毎日毎日、365日×4=1460日間以上ずっとですか。

『子どもって・・・ユキちゃん、一人で「あいつ」を・・・?』

そしてそれについては言及しない大神。
この辺りが白雪と付き合うコツなのかもしれない。
白雪は頷く。

「そうだよ・・・大神がいなくなってからボクはシングルマザーとして『あれ』を育てていた。それなのにお前は・・・ボクと子どもよりも彼らのほうに会うことを優先して・・・」

「で、子どもって何のことなの?」
「さぁ・・・」

二人(幽霊も一人二人と数えていいのだろうか)を思い切り無視して紅印は犬飼と御柳に尋ねた。
しかし二人とも本当に心当りがない。
男同士なら養子でもいるのだろうか。
が、遊びに来ていた辰羅川は心当りがあるようだった。
もしかして・・・と呟いた言葉に全員が反応する。

「大神さんが前に友だ・・・いえ、恋人と新打法を開発中だといっていたのですよ。もしかしたらお二人で開発された=二人の子どもといった表現をなさっているのではないでしょうか」
「・・・・・・・・・それって、空蝉?」
「おそらく」
「うわぁ、なんかオレ・・・一気にやる気なくしたかも・・・」

由太郎がげんなりとした声で言う。

「・・・・・・そんなことより怪談の続きやんね?」

無視を決め込むことを決意した影州が雀から蝋燭を奪い、兎丸へと渡す。
兎丸はそれを受け取ると話し出した。

「なんか5年ぐらい前の話なんだけどね。あるカップルが子どもつくったんだって」
「・・・・・・は?」
「だから高校生同士で子ども作ったんだって。周囲からは奇異の目で見られたけれどその生徒は絶対に子どもを捨てようとしなかったらしくて、当時はかなり話題になってたみたい。だけど、片方が事故で死んじゃって・・・もう片方の人は一人でも子どもを育てようと決意したんだ」
「いい話ではないか」

何処が怪談なんだ。
そう言いたげな魁に兎丸は低い声で続きを言う。

「だけど、その二人の子どもを見たものは誰もいないって話で・・・それも、こういう話を必ず知ってそうな教師は、誰もその事実に気づかなかった・・・・・・一部生徒の間でのみ、彼らの間に子どもが出来たことを知っていたらしい・・・だけど誰も当時のことを詳しく語ろうとはしないんだ・・・・・・そして本当に恐ろしいのは・・・」
「恐ろしいのは・・・?」

御柳以下全員が息を飲む。

「その子どもの親って二人とも男なんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

そんなオチか。
そう思ったのは御柳、犬飼、屑桐、牛尾。
司馬と白春はなーんだ、と言う顔。
が、それ以外の者は一様に青ざめている。

男同士って、子ども出来たっけ・・・・・・?

「・・・・・・・・・・・・あの、オチにがっかりしてらっしゃるようですけど・・・男性同士で子どもは出来ないという事実を分かってらっしゃいますか・・・・・・・・・?」
「そうなの゛!?」

辰羅川の質問に白春は心底驚いた顔をしていた。
諦めずに屑桐とヤることヤっていればいつかは自分も丈夫な赤ちゃん産めると信じていたのに。
そんな顔だ。
一体彼はこの年までどんな性教育を受けてきたのか非常に疑問である。

「へぇ〜、それなのに男同士で子どもが出来ングするなんて、不思議な事もあるもんだな゛ぁ・・・」
「・・・・・・それって、もしかしなくてもあの幽霊と監督のことで、子どもは空蝉のことじゃねーの?」

影州が思ったままを口にする。
全員の視線が大神と白雪に集まる。
どうやったのか、幽霊とがっちり抱き合っている白雪。

「・・・・・・あー、それならば納得もいくのう」

Mr.クワットロがうんうんと頷く。

『・・・ユキちゃん、機嫌直ったか?オレが好きなのはお前だけだって分かってるだろ?』
「・・・・・・勿論、そんなことは分かっているよ、大神」
『ほれ、子ども達だって見てる。それとな・・・オレ達の子ども、ってか空蝉、完成させてくれて・・・ありがとな。やっぱりユキちゃんはオレが見込んだとおりのBIGな姫だ』
「そうかい?ありがとう、大神。お前にそうやって言ってもらえるだけで子どもを立派に育てた甲斐があったよ」

「・・・・・・そろそろお開きにしたいと思いまーす」

兎丸はそう言うとさっさと蝋燭を吹き消した。
全員が布団にもぐりこむ。
白春は0.1秒で熟睡するというのび太並の神がかり的な技を披露した。
どうやらよっぽど眠かったらしい。

「とりあえず・・・誤解を招くような表現は止めて欲しい・・・」
「オレ、本気で大神さんと監督の間に子ども出来たかと思った・・・つーか、男同士だと産めないんだな・・・」
「いい。産めなくてもオレはお前が好きで、お前と一つになりたい」
「冥・・・」
「始めたりしたら監督共々追い出すわよ、アンタ達」

布団の中で何かを始めようとする犬飼と御柳に紅印はしっかりと釘をさした。



翌日、白雪監督はやたら上機嫌だった。
ちょくちょくと沖や蛇神を呼びつけては大神の霊を降臨させてもらっているという噂が流れるのも時間の問題だろうと選抜メンバー全員が思っていた。









あとがき

もし選抜メンバーに蛇神さんが選ばれたら、それは実力+大神さんの霊を呼び出せる交霊能力を買われたものだと思う。
もともとはチャットの中で『空蝉を大雪で開発したものだとしたら子どものような存在だろう→大神が死んじゃったので白雪が一人で子ども(空蝉)を立派に育ててる(完成させる・秘打法に)』というような流れがあったために作ってみました。
チャットは妄想力がやたらと養われる、すばらしいシステムです。
参加者様、ありがとうございました(ペコリ)
大雪高校時代編で詳しく書けたらいいなーと思っております。
しかし、怪談にしたのはあまり意味がないような。