※このお話では犬飼と御柳がもういいよねこの説明
※白雪監督は大神さんのことがすごく好きです
※今回、オリキャラ出てます





「冥・・・な、なんで・・・」

御柳の目に飛び込んできた光景は犬飼に迫る辰羅川。
白雪が来る前は二人きりだったと推察すると、これは白春が日誌に書いた通りに―――

「っ・・・冥・・・」

浮気された。
その事実が許せなかった。
もう辰羅川を欺くのも面倒だった。
何よりも犬飼を独占したい。
なのに、彼はそれを裏切った!

「冥の・・・っ浮気者!」

御柳は犬飼に近付くとその左頬を思い切りビンタした。

「冥なんか・・・嫌いだっ!」
「芭唐・・・っ!?」

瞳を潤ませて御柳は踵を返した。
慌てて追いかけようとする犬飼の手首を辰羅川ががっちりと掴んだ。

「お待ちなさい、犬飼君!」

だが犬飼はそれを振りほどく。
そして辰羅川を思い切り睨んだ。

「辰・・・オレが本当に好きなのは芭唐だ・・・・・・とりあえず・・・今まで騙してたことは謝る・・・だが、オレが好きなのはお前じゃない」

犬飼はそう言い、御柳の後を追いかけた。
辰羅川は一瞬何を言われたのか分からないと言う表情を浮かべた。
だが、すぐに彼も犬飼の後を追って行った。

「・・・・・・」

白雪はそれを見届けた後、どこか影のある笑みで猿野達を見た。
声を掛けるタイミングを完全に失っていた猿野達はその笑みを「引っ掻き回すつもりはなかったんだよ・・・」と言う意味で取った。
さぞ監督は責任を感じているだろう。

「あの・・・白ゆ・・・」
「どうしてかな?」
「え?」
「せっかくボクと大神が愛をもって開発した空蝉を教えようと言っているのに、どうして君達は特訓を続けてくれないんだろう・・・」
「・・・・・・」
「そんなにボクらの愛は重かったかい?」

反省の色なし。
責任かぶる気もなし。

「・・・犬ッコロとバブリシャスとモミーのことは?」
「・・・・・・」

白雪は大きく溜め息を吐き、夜空を見上げた。

「大神・・・」

呟かれたのはおそらく犬飼達が慕っていたとの人物だろう。
さっき白雪が熱く濃厚な愛を込めて語っていた気がする。
その人物の名を出すと言うことは、やはり少しは反省しているのだろうか?
そう思った猿野と由太郎はまだ甘かった。

「他人の修羅場って、見ていて楽しいよね」

他人の不幸は蜜の味。
白雪の心底楽しそうな声と表情から、猿野と由太郎はその言葉の意味をよく知った。



「だからぁ、別に私は二人の邪魔をしたい訳でも別れさせたい訳でもないの!分かってる?」

ホテルの廊下で牛尾と屑桐が御柳の姉―――メルと言い合いをしている。
会話からいけば恋愛だのなんだのだろう。
しかし、それにしては何かおかしい。
普通はこういう場合、男共が女を取り合うと相場は決まっている。
だが彼女の言葉から考えると、まるで牛尾と屑桐の障害がメルであるとも推察できる。
偶然通り掛かり判断に困った虎鉄は何も見なかったことにしてその場を去った。

「メル・・・いや、お前の言うことも分かるが・・・」
「だったらもういいでしょ。私は冥と芭唐を別れさせたいんじゃなくTPOを弁えさせたいの。目の前でイチャイチャされてアンタ達が欲求不満になるのは当たり前、だけどそれだってTPOさえ弁えてくれりゃ文句ないんじゃない?」
「合宿中という時点でそういう問題ではすまないんじゃないかい?君だってそう思ったからこそあんな脅しを・・・」
「冥のバカ野郎〜っ!」

噂をすれば影。
3人の側を、御柳が猛スピードで走り抜けた。
目には涙、言っていることも普段と違う。

「・・・・・・芭唐?」
「何があった?」
「とりあえず待て、芭唐っ!誤解だっ!」

それを追いかけるは犬飼冥。
こちらはかなり必死。
切羽詰まった顔をしている。

「・・・まるで浮気がみつかったような顔だね」
「お待ちなさい、犬飼君!私はまだ納得したわけでは・・・」

浮気相手・辰羅川登場。
牛尾の冗談は冗談にならなかった。

「・・・しょうがない子達ね。何があってこうなったのかしら?ちょっと信二!何があったの!?」
「我々が白雪監督と話していたら突然犬飼君が私を捨てて御柳君の元へと走ったのですよ!」

その解釈は色々な意味で間違っていると思うが、牛尾も屑桐も下手に口を挟めない。
辰羅川にはそれほどの迫力があった。

「・・・白雪監督はどこに?」
「まだ公園にいます。犬飼君、お待ちなさいっ!」

辰羅川が猛ダッシュ。
メルはそれとは逆方向へダッシュ。

「って、メル!?」
「私の弟に何吹き込んだのよ、白雪先輩っ!」
「・・・先輩・・・?」
「白雪静山は私が中一の時に親しかった先輩なのよ!別名白雪姫またはトラブルメーカー!」
「・・・・・・」

トラブルメーカーは間違っていないな、と牛尾と屑桐は思った。
あの監督、合宿始まってから一見まともそうに見えて全然まともじゃないことしかしていない。
4人野球はチーム分けに大問題。
北海道戦なんて雨が降らなきゃどうなっていたことかなオーダー。
あげく真剣振り回すわ犬飼と御柳を修羅場に持って行くわでろくなことしてない。
ともかく疲れた表情で牛尾と屑桐は部屋へと戻ることにした。





「白雪先輩・・・っ!」
「メルかい?久しぶり、懐かしいね。胸が成長してないからすぐに分かっ・・・」
「お黙りなさいセクハラ白雪姫。大神先輩がもういないからって他人の恋愛を修羅場化させて楽しむのやめてくれない?」
「それは違うよ、メル。大神がいたとしてもボクは二人を引っ掻き回しただろうからね」
「はいはい、寝言はメルヘンの国に帰ってから言いなさい」

メルは白雪に辛辣な言葉を浴びせ、猿野達を見た。

「白雪先輩が冥と芭唐引っ掻き回したんだって?」
「う、うん」
「そりゃもう、楽しそうに・・・『他人の修羅場って見ていて楽しいよね』って・・・」

猿野と由太郎は白雪の方をちらちらと見ながら言う。
言ってもいいことなのか、これ。

「・・・姫先輩・・・」

それを聞いたメルのドスのきいた声と言ったら。
いつもと同じように平然としている白雪はすごい。

「これ以上芭唐達の邪魔したら、姫先輩のキレイな顔・・・キズモノにするわよ?」
「そんなことしたら大神の墓前に報告するよ?『お父さん、あんなに可愛かったメルちゃんがヒドいことをする子に育っちゃって、お母さんは悲しいよ』って」
「私はアンタのような人目も憚らずに大神先輩とイチャつく男に育ててもらった覚えがないです」

メルが心底嫌そうな声で白雪に言う。
白雪、未だ動じず。
むしろいつもの微笑み。
この時、猿野と由太郎は確信した。
白雪は他人の修羅場を楽しむだけでなく、自らの修羅場をも楽しんでいる、と。



その頃、部屋では大変なことになっていた。











あとがき

おねーちゃんが白雪姫を睨んでる裏で御柳君は危機です。
次回、犬飼に無理矢理・・・の予定です。
みんな見てるから紅印さんウハウハです。白春は寝てるかな?
でも予定です。ヤるかもっていう予定です。しかも無理矢理(もういい)