※この話では犬飼と御柳がとっても仲良しです。






「犬飼君、ミヤバカ君」

兎丸が何か裏のありそうな笑顔で2人に近づく。
兎丸に耐性のない御柳が一瞬引いた。
犬飼はそんな御柳を庇うように前に立つ。

「何の用だ。オレ達の邪魔するな」
「君らも練習の邪魔しないでくれる?ああ、もう、ほんっとウザイ!メルさんが怒るのも分かるっつーかやっぱり帰ったら、君たち!」
「ちょっ、ウサギ!」

影州が慌てて小声で呟く兎丸の口を塞ぐ。

「何?オカマの弟でモノマネしか能のないナンパ男さん」
「お前、先輩を何だと思ってやがる・・・って、そんなことどうだっていいんだよ!お前、言われたじゃねーか!こういうときは相手の意見に全面的に賛成するフリを続けつつ利用するって!」
「その時はそう思ったけどさ、実際話してみたらムカつくことこの上ないんだよね」
「これが合宿終わるまで延々続けられるのに比べたら一時の我慢ぐらいなんだってねーだしょ!」
「だって僕、近い将来よりも今この現実を大切にする人間だからさ」
「ハイハイ、協力する気がないウサちゃんはお黙りなさい」

紅印が影州に代わって兎丸を遠くへと引きずっていく。
影州と桃食、録はコホンと咳払いをして何事もなかったかのように話を続けた。

「いやー、オレ達今までお前達の事すっげーウザイとか思ってたけど、ちょっと冷静になって考えてみたらそうでもないことに気づいたんだよ」
「・・・はぁ」

それで?と犬飼が胡散臭そうな目を向ける。
突然手の平を返すなんて、何かあったと考えるのが自然だろう。
何しろ彼らは今の今まで自分達を頭の悪い人間としてみていたのだから。
敵が突然味方になるときは注意が必要。
これは2人が体験から学んだものだった。
2人の関係を知ってホモとからかっていたクラスメイトがある日を境に急に親しくなった。
辰羅川の刺客(スパイ)になったのかと二人が気づくのにそう時間はかからなかったが。
以上の事から彼らは急に近づいてくるものへの警戒心が相当強かった。

「それでだな、お前達の恋路をこれからは応援しようと思うんだ」
「「はぁそうですか」」
「二人揃って棒読みかよ」

兎丸が怒るのも分かるような気がする。
影州は何とか怒りを抑えて笑顔で言葉を続けた。
この辺が1年生と3年生の格の違いというものか。

「そう、そうなんだよ。それでな、監督に交渉して、選抜で勝ったら個室にしてもらえるように頼もうと思ってるんだぜ。いいアイデアだと思わね?」

ああ、思うよ。
全部メルさんの受け売りだけどな。
録はひそかにツッコミを入れた。

(だけど・・・そんなにうまくいくのかな・・・)

ここまで誰も気づかなかったことの方が不思議だったのだが、よく考えればこの提案をしたのは御柳の姉である。
つまりは御柳がこの『餌で釣って手の平の上で転がせ』作戦(命名紅印&影州)を知っている可能性が非常に高い。
沖はその可能性に気づき、それでもめんどくさいから伝えるのはよそうと判断した。

「個室・・・つまり芭唐といつでもヤれるって事か?」
「うん、まぁ、いつでもって言うか練習中以外な」

こうして釘を刺さないと野球の練習中でも別の練習に励みかねない。
影州はそのことをしっかりと分かっていた。

「悪くねー話だと思うぜ?」
「うん、悪くない。むしろすっげーイイ!」

御柳の瞳が輝く。

「冥、こいつら本当に協力的だと思うぜ!」
「単純でよかった」
「ウサちゃん、お黙りなさい!」

遠くから聞こえたはずの兎丸と紅印の言葉は御柳には届いていなかった。
だが、犬飼は思案顔だ。

「・・・・・・とりあえず、心遣いは嬉しい。が、その作戦を本当にお前等が考えたとは思えん」

あ、ばれたか。
兎丸が舌打ちをする。

「大方、誰かに賄賂・・・甘いもん贈ってそれで釣っただろ」
「な、なんで分かるカ!?」
「たった今ホテルから出てきた華武のマフラーの口元に、ホテルに入るときにはなかったあんこがべっとりとついている」

一斉に白春のほうを全員が向いた。
白春は慌てて首を振る。

「お、オラ、菖蒲監督から賄賂に贈られた赤福なんてもらいングしてないよっ!一緒に食べて高級な『玉露』ってお茶飲んでまったりなんてしてねーべ!お土産に煎餅貰いングなんてしてないもんっ!」
「ちょっと、アンタ本気で埼玉帰ってくんない?ほら、君程度の頭だと今から勉強しなくちゃ大学受験に間に合わないかもしれないよ。絶対間に合わないに1億円かけてもいいけど」

兎丸がギロチンバットを装備して白春に詰め寄る。
その白春が吐いた言葉で漸く御柳は悟ったようだ。

「あ、菖蒲監督の入れ知恵?」
「違う。メルさんだ」
「!あ、姉貴、オレらのこと応援してくれてたんじゃ・・・」

御柳は信じられないという表情になる。

「確かに・・・オレ達が夜中に訪ねていったときは温かく迎えてくれて、邪魔にならないようにって別の部屋で寝てくれたはずだ・・・オレにも、とりあえず・・・あの人が入れ知恵したなんて信じたくないが・・・この作戦はあの人が考えるそれにそっくりだ・・・」
「いや、後半は認めるけどさ」
「あなた達、一体世界がどういう風に見えてるの?」
「二人共 自己中心的」
「前半、完璧にお前等の妄想だろ」

影州、紅印、雀、猿野が犬飼に次々とツッコミを入れる。
ともかく、御柳姉本人は『夜中に押しかけてきてウザイ』だの『私の部屋はラブホじゃない』だの言っていた筈だが、どれだけ曲解されていたんだろう。

「ともかく、その手には乗らない。オレと芭唐は二人だけの空間がなければつくる。風呂場だろうとベンチ裏だろうとな!」
「冥っ・・・カッコいい、冥・・・」
「言い回しはともかく、内容はちっともカッコよくないけどな」

猿野の苛立ちをこめたツッコミは二人の世界には届かない。

「邪魔者はすべて消し、オレ達は新世界の神となる!」
「デスノートかYo」

声高らかに宣言する犬飼。
虎鉄のツッコミも空しい。

こうして貴重な練習時間がまた無駄に費やされていくのであった。








あとがき

次のネタ探ししよーっと。やっぱり殺人事件の犬柳かな?
メルフォやら拍手やらで面白いネタ(具体的なの)があれば採用するかもしれません。