※この話では犬飼と御柳がとっても仲良しです。 「冥」 廊下で声をかけられ、犬飼は振り返った。 見ればいかにも今からお風呂入ってきます的なスタイルの御柳がそこにいた。 犬飼は顔をしかめる。 「うるせぇ」 「あ、んな態度取らなくてもヘイキだって。皆、今、食事中だからよ」 対外的には仲が悪い、で通している二人だったが実は結構な仲良しさんだ。 仲が悪く見せている原因は二人でいるといつもうるさい辰羅川。 彼が「私の犬飼君を!」とうるさいのでその対抗策。 「久しぶりに一緒に風呂はいらね?邪魔もいないしよ」 御柳は犬飼の手の中の入浴セットを見てウインクする。 そんな御柳に犬飼はわずかに頬を緩めた。 「・・・・・・とりあえず、誰も来ないんだな?」 「来たらまた仲悪い演技すりゃいーだろ」 そう言うがはやいか御柳は犬飼の左手を握った。 犬飼もまんざらではないらしく滅多に見せない優しい微笑で手を握り返した。 そのままお手手繋いで浴場へ。 身長190cm前後の高校生男子が小学生の女子そのままのノリで歩く。 偶然それを見てしまったMr.クワットロは自分は相当疲れた所為で歩きながら夢を見てしまったと思ったほどだ。 かぽーん。 ししおどしが露天風呂に響く。 必要以上にベタベタと纏わりつく御柳に犬飼は不快そうな顔も見せない。 スキンシップの延長。 中学生の頃に思いっきり一線を超えた二人は今更こんな事ぐらいで嫌がらない。 超えた経緯は純粋な好奇心だったが一度超えたら好奇心は好意に変わっていた。 「逞しくなってんじゃねぇか、芭唐」 「まぁな。冥だってだいぶ筋肉ついたし・・・・・・いい男になったし・・・・・・あ、そうだ!オレ、一度温泉で泳いでみたかったんだよなー。他に客もいないし、いい?」 返事を待たずにばしゃばしゃと泳ぎだす御柳を犬飼は愛しそうに眺めた。 「合宿とかで泳がなかったのか?」 「泳ごうとしたらそれだけで久芒さんにグーで殴られて屑桐さんから説教3時間、あのお面から正座3時間言い渡された」 そりゃあ泳げねーよ。 御柳は困ったように笑った。 「・・・オレは温泉に来たら泳ぐよりも・・・」 犬飼がそんな御柳の腕を掴んだ。 御柳がその意味を悟って犬飼の唇に軽く触れるだけのキスをした。 「・・・・・・する?」 「したい。・・・・・・けど、芭唐が・・・」 御柳は案外のぼせやすい。 小学校の時の修学旅行でも中学校の時の野外研修でもほんの短い入浴時間でのぼせかけたりしていた。 高校に入ってからのことは知らないが、のぼせて倒れてしまわれると色々面倒だ。 「オレもしたい〜!いいじゃん、シよ?」 御柳はそんなことどうでも良かった。 ただ犬飼と触れ合いたい。 一緒にいたい。 一つになりたい。 「一回、露天風呂でしてみたかったんだよな〜」 「お前、そんなのばっかりだな」 「したい。あ、オレが受けね。前と一緒」 「当たり前だ」 再び唇を重ね、今度はディープな方を・・・・・・とお互いが考えた時。 ぱきっ。 「あ゛っ!」 誰だ、いいところを邪魔しやがって。 御柳が不機嫌そうな顔で音と声のした方を見れば。 「・・・・・・・・・お、おじゃましま゛したぁ・・・・・・」 「待てや、コラ」 華武高校2年・久芒白春。 属性は屑桐一筋の天然(たぶん)。 よりによってこいつか。 口止めしても効果のないこいつか。 「いつから見てた?」 「・・・・・・い、一度温泉で泳ぎングしてみたそうなところから・・・・・・」 「最初からじゃねぇか・・・」 犬飼は頭を抱えた。 御柳は白春を手招きで呼ぶと温泉の中に引きずり込んだ。 「ぎゃっ!?げほっげほっ、何すんだよ゛〜ぅ!?」 「まず黙れ。そして聞け」 犬飼が彼を年上とも思わぬ態度で睨みつける。 白春はビクッと背筋を伸ばす。 「今見たことを他人にばらしたらテメェが甲子園の土を踏むことは二度と無いと思え」 「っていうか陽の光すら浴びれないと思え」 「口外禁止だ。意味はわかるな?」 「特に華武の先輩方にばらしたら・・・分かりますよねぇ、久芒サン?」 ノーなんて言わせるか。 犬飼と御柳から迫られる白春はただ何度も首を縦に振る以外なかった。 「わかりゃあいいんすよ。じゃ、オレもう出るから」 「とりあえず・・・オレも出る」 取り残された白春は呆然としていた。 3分後、録が来るまでそのまま固まっていたという。 「ろ、録ゥ〜っ!」 「どした気、白春!?」 「あう゛ぅ〜、あの゛ね゛っ、あの゛ねぇ〜っ!」 泣き喚く白春(最早何を言っているのか何が言いたいのかがまったくもって意味不明)と脱衣所で見た光景から録は勝手にあの二人の仲の悪さにあてられたか、と思った。 「ごめん、冥。まさか久芒さんがいるとは思わなかった」 「いや、別に気にしてないからいい。・・・けど、萎えた。あの人、タイミング悪すぎるな」 そのまま会話を続けようとしたら録が入ってきた。 せめて白春もこれぐらいタイミングよく入ってきてくれたら。 このツーショットを見て録が一瞬顔色を無くしたのは気のせいではないだろう。 演技開始。 「あー、録先輩。入るんすか?」 「え・・・う、うん・・・」 「やめた方がいいっすよ。どっかのクソ犬が入った所為でお湯がオクサレ様入った後みたいになってますから」 何だ、オクサレ様って。 少し考えた録は「ああ、千と千尋ね・・・」と思い当たった。 犬飼が御柳をすごい目つきで睨みつける。 「テメェが入った所為で腐ってんじゃねぇのか」 「あ?んだと?」 にらみ合いでどんどん互いの仲が険悪になっていく(ように見せかけている)。 録は怖くなって急いで露天風呂のほうに向かった。 その姿が見えなくなった途端、御柳は犬飼の頬にキスをした。 「寝る場所は隣がいいんだけど、何とかならねーかなー?」 「隣はやばいだろ」 「なんでだよ」 「とりあえず・・・お前が隣にいると・・・抱きたくなる・・・」 「あま〜い!甘すぎるよ、冥〜v もう抱けっ、この場でいいからっ!」 余計やばいわ、と犬飼は心の中でツッコむ。 御柳の頭を2度ほど軽く叩き、その手を握る。 「もう戻るぞ」 「もう?・・・な、明日こそ風呂場でやろうな」 そこしかないんだし。 御柳の言葉に犬飼は微笑んでさっきのキスのお返しをした。 「ああ」 そして部屋に戻ってみれば誰の隣で誰が寝るかで紛糾していた。 あとがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・がはっ(砂糖) 続くんかい、これ。続くかもしれない。 なんだこの新婚バカ丸出しの雰囲気の2人。 合宿の夜は長いよ。 夕食は2人で向かい合って、とか隣同士、とかだとまたすごいことに。 |